明日がFacebookページタイムライン化のXデー。今あえて、Facebook/Twitterキャンペーンの効果を数値的に再考してみる

今あえて再考するFacebook/Twitterキャンペーン(カバー画像)

こんにちは。
シックス・アパートで Lekumo(←あんまりまだ知られていないんだよなぁ、「ルクモ」といいます!)のプロダクト・マネジャーを担当しています大越です。

さて、このブログ記事をお読みの方には既にご存じな方も多いかと思いますが、Facebook ページのタイムライン化が 2/29 に Facebook Marketing Conference (fMC) で発表され、明日には既存の Facebook ページが全部、自動的にこの新方式に移行します。シックス・アパートもご多分に漏れずタイムライン化を先週実施しましたが、Facebook ページをお持ちの企業の皆さんは、年度末の忙しい時期とも相まってこの対応などで大賑わいという感じでしょうか・・・。

というこの機会に、少し Facebook ページの現状と今後の方向性、そして (私が Lekumo キャンペーンビルダーという製品を担当しているからっていうがあるんですが ^^; ) このタイミングで、Twitter や Facebook を使った所謂「ソーシャルメディアキャンペーン」について再考してみました。

Facebook ページをめぐる昨今の数字

さて Facebook ページと言えば、企業における Facebook 活用の第一歩とでも言えるでしょう。日本国内ふくむ内外の多くの企業が開設していますが、その効果のほどはどうなのでしょうか?"キーワードは「好感・共感」「キャンペーン」「クチコミ」だ。 " と活用例が盛んに紹介されたりする一方、Facebook ページ上でのコマース "Fコマース" に関しては、失敗した事例も米国では昨秋ごろから紹介されています。

F-Commerce is failing
Gamestop to J.C. Penney Shut Facebook Stores より

"Fコマース" 一般が失敗という事を意味するものではないですが、ひとつの期待をもって開いた Facebook 上コマースの第一波の中には、失敗例もあるということは明らなようですね。上の記事の中では、ショップを設置してはみたものの、ユーザーが Facebook ページにアクセスしてくれない事が取り上げられています。

いいね! したユーザーの 96% はページには再訪しない

この点を指摘する数字として割と広がっている数字が、「いいね! したユーザーの 96% は、その Facebook ページには再訪しない」 (米国の独立系代理店 Brand Glue 社) があります。この数字自身はオリジナル記事が明らかでなく、リンク先に「Fan Page」と書いてあることや 検索にヒットした引用記事の日付などから、おそらく 2011 年前半の数字だと思われます。ポイントは「ユーザーはホーム画面 (「ニュースフィード」) に "住んで" おり、Facebook ページにはなかなかアクセスしない」という点でしょう。

96% of Liked user never come back.
http://brandglue.com/about-nfo

また、別の数字として、TechCrunch は "情報筋" からの数字として、

Facebookアプリへのアクセスは、「そのアプリを Facebook ページのデフォルトタブへ設定したことによる、ページトップ URL でのアクセス」は 10% にすぎず、90% は「パブリッシュされたリンクや広告から」である
Facebook Timeline For Pages Kills Marketing Feature: Default Landing Tabs

と報じています。ユーザーは、友達が盛りあがって投稿した「私の○○診断の結果は...」という近況アップデートからのアプリへのリンクを、よく踏むということですね。

ウォールから投稿してもファンの 16% にしか届かない

Facebook ページで待っていてもユーザーは来ない。となると、良質なコンテンツをユーザーのフィードへ流してユーザーを惹きつける事が重要になってくるわけですが、それに関連した現状の数字として fMC で発表されたのが、

Facebook ページからのファンへ向けた投稿は、ファン総数のうちの 16% にしか表示されていない
Your Average Facebook Post Only Reaches 12% Of Your Friends
という数字です。

Facebookページの効果について数値的なまとめ

タイムライン、コンテンツ化する広告・・・Facebookのねらい

ここまで紹介した Facebook ページをめぐる数字には、それぞれ信憑性の面でツッコミをすることはできますが、あえて大枠の傾向としてとらえた上で、今回 fMC で発表された施策を見てみると、Facebook 社の長期的なねらいがより立体的に見えてきます。

Facebook は参加企業に、ファンシーなページを作って待ち構えたりプレゼントでユーザーを「釣ったり」するのではなく、ユーザーの共感を呼ぶようなコンテンツの発信やユーザーとの双方向の対話によって、ストーリー性をもってブランドをユーザーの記憶に残し、本心で「いいね!」と思ってボタンを押してもらえるような長期的ブランディングを求めているのでしょう。そしてそれは当然、長期的に Facebook 全体の価値を高めるからと判断しているからなのでしょう。

それを裏付ける Facebook 社の方々の発言を以下にご紹介。

抱き合わせ販売"のような感じで、これをしないとタイムセールに参加できない、というのはFacebookの考え方とは異なる、ということだ。その企業なりブランドのファンになった(後で、その)人が、いいね!と押してクーポンなどで割引きを受けるのとは、似て非なるものなのである。」(フェイスブック日本法人 児玉氏)
Facebookページ利用キャンペーンに、いくつかの誤解がある フェイスブック日本法人を代表する児玉太郎氏講演――第1回読者限定セミナー「Facebook Impact」報告
「タイムライン化によって、それぞれのFacebookページの歴史が見えるようになり、ページにアイデンティティが生まれ、命が吹き込まれ、ストーリーが流れる。そのブランドのストーリーや歴史を知ると、人々の記憶に残っていく」(フェイスブック グローバルディレクター ヘザー・ホプキンズ氏)
ユーザー体験を損なわずに広告収入を上げる、見えてきたフェイスブックの戦略 - ニュース:ITpro

(1) Facebookページのタイムライン化

詳細な内容はすでに出ている様々な他の記事に譲るとして、(1)ページの「デフォルトタブ」という概念を無くして、ファンでないユーザーからのアクセス時にも常にタイムラインを表示したり、(2)カバー画像での商業的な告知を禁止したりといったあたりが、ポイントでしょう。

Six Apart's Facebook page

また、表示をタイムライン化することで、ホーム画面に住むユーザーにスムーズに Facebook ページへ遷移してもらう狙いもあるかもしれません。層だとすると、この辺りは、今後 PC や スマートフォンアプリ上の仕様に細かく update がかかるのでは?と考えています。

ちなみに、ページのデフォルトタブは廃止にはなりましたが、ウェルカムアプリ自体は廃止になってはいません。この点は、後で解説します。

(2) 新しい広告商品 (「リーチジェネレーター」など)

新しい広告商品であるリーチジェネレーターは、ページからの投稿をより多くのファンに届ける商品であり、前述の「16% のファンにしか表示されない」問題へのアプローチとなっています。

そしてここでいう「広告の内容」は、Facebook ページからの投稿そのものであり、それがユーザーのニュースフィードの中に入り込んでくるわけです。当然ユーザーに煙たがられる類の広告情報はファンの減少にも繋がるため、企業側は、ユーザーに「ニュースフィードの中の情報として」ウケる投稿をする必要がありますね。この辺りも、上述の Facebook の意向を体現したしくみなのだろうと思います。



では、ファンゲートを使ったキャンペーンはどうなるのか?

さてここまで書くと、Facebook の企業利用としてはどこでもやってるんじゃないかとも思えてしまう、例の「ファンゲート形式のキャンペーン」・・・「いいね! をしてもえらばこんなプレゼントキャンペーンに応募できます。こんな診断できます。」といった、「いいね!」数獲得目的のキャンペーンの図式はどうなってしまうのか?という話題が出てきます。

Facebook campaign fan-gate

長期ブランディング戦略とのトレードオフ

ファンゲート形式の短期的な「いいね!」獲得のキャンペーン施策が、Facebook の目指す方向性と異なることは間違いないでしょう。

Facebook の方向性は、Facebook 社、ユーザー、企業の3者間での win-win 関係にもとづく「共栄」であると考えられ、そのとき企業に求められるのは、「本当にファンになってから「いいね!」を押すユーザー行動」の獲得であり、「プレゼントに釣られていいね!」を押すユーザー行動」の獲得ではないはずです。

「Does Facebook Fan-Gating Hurt Facebook Engagement?」(日本語タイトル「ファンゲートはエンゲージメントを損なう存在なのか?」) という記事にて、興味深い一文がありましたのでご紹介します。

「私はfacebook上でプロモーション活動を行う依頼主たちと、何度もキャンペーン用のアプリを使うためにファンゲートを導入するか話し合う。そんなとき私はいつもクライアントに、次のように考えてもらうようにしている。人々をプロモーションへと流入させブランドと双方向的な関係を築くことと、キャンペーン用のコンテンツをファンゲートの裏へと隠すことはトレードオフの関係にあるのだと。」
ファンゲートはエンゲージメントを損なう存在なのか?
(訳元: Does Facebook Fan-Gating Hurt Facebook Engagement?)

ただし技術的にはこれからも実施可能

とはいうものの、ここまでお読みの方で「ファンゲート形式」に明るい方であればお分かりかと思います。どうしてもファンゲートをやりたいブランドや、目的に応じて短期的にファンを集めたいブランドは、3月30日以降もこの種のキャンペーンをすることは可能です。

  1. タイムラインで「デフォルトで表示するタブ」の設定がなくなり、非ファンユーザーがページのトップにアクセスしたときに特定のアプリを表示させることはできなくなる。したがって、その経路でのウェルカムアプリへのアクセスはなくなります。
  2. ただし前述の様に、アプリへのアクセスは 90% がニュースフィード上などにパブリッシュされたアプリへのリンクや広告からだとすると、(1) の影響を受けるのはウェルカムアプリ総アクセスの 10%。「友達のニュースフィード上の診断結果を見て自分も診断にアクセスする」経路は生きたままです。
  3. ファンゲートを実現する、アプリ、iframe での外部コンテンツ表示、外部コンテンツへ情報を渡す Signed_Request といった個々のしくみは依然利用できるので、実装は可能です。

ただ、当たり前な話ではありますが、この種のキャンペーンがまだ可能なのは、ひとえにプラットフォームである Facebook がしくみである API を提供し、規約的にも許可しているからです。近い将来それらが改訂され、事実上実施ができなくなる可能性もあるのではないかと、著者は考えています。

そもそも Facebook キャンペーンでのバイラルには制限が

また今回の変更とは直接関係ないですが、そもそも、今ふれた「規約」の面で Facebook上 でのこの種のキャンペーンのバイラル効果については厳しい点があります。Facebook のプロモーションガイドライン (2011年5月11日版) によれば、

4.Facebookページへの「いいね!」や、スポットへのチェックイン、アプリとのつながり以外のFacebook機能を使った何らかの動作を実行することを参加または応募の条件とすることはできません。たとえば、ウォールの投稿に対して「いいね!」する、ウォールに投稿された写真にコメントする、などの動作を参加または応募の条件とすることはできません。
Facebookプロモーションガイドライン (2011年5月11日版)
つまり、(1)Facebookページへの「いいね!」、(2)スポットへのチェックイン、(3)アプリへのコネクト この3機能以外の Facebook 機能を、応募の「条件」にしてはいけません。言い換えると「こんなキャンペーンに応募しました!」と自分のウォールに投稿することを「必須」にはできないのです。 (例えば とある Facebook キャンペーンアプリの中では「任意で書きましょう」的なニュアンスの説明が書かれており、オプトアウトできる)

ウォールづたいにユーザーからユーザーへとキャンペーン情報がバイラルで広がる広がり方は、Facebook 上では少しハードルが高いと言えるでしょう。

今あらためて考える Twitter と Facebook の違い: ブランドの認知度向上キャンペーン

Facebook の言いたいことは分かった。で、それでも、特にブランドの認知が現在低い場合など、長期的な「本質的ファンの獲得」と並行して短期的な認知度向上も必要だと言う場合、今後どういう戦略をとれば良いのでしょうか?

と、ここで視点を一歩マクロにして、いまいちど Twitter と Facebook の違いについて考えてみたいと思います。Twitter と Facebook といえば、日本の SNS 市場でこの2,3年急速にユーザー数を拡大している「2大ソーシャルネットワーク」・・・と言いたいところであるが、最近では「ソーシャルなのか?」という面も含めて、その違いをもう少し深掘りすると、面白い違いが見えてきます。特にユーザー同士のつながり、情報の流れ、企業からユーザーへのリーチなどについてですね。

Twitter Facebook difference

  • Twitter では、ユーザーは実名/ニックネームなど任意で複数のアカウントを持って使い分けることができます。一方 Facebook では、その実名性のルールに基づき、一人1アカウントのみとなります。
  • Twitter では、幅広い「興味」にもとづいて、「非対称的」な「フォロー」による interest graph が形成されています。一方 Facebook では、主に交友関係に基づいて、多くの場合「相互認証のfriending」による social graph が形成されています。
  • Twitter では情報はフロー傾向が強く、過去の投稿の検索性は概して低い。一方 Facebook ではストック、フロー両方の側面があるのではないでしょうか?タイムラインにおいても「自分史」的機能があり、数年前の投稿を振り返られる点が強調されています。

このあたりの違いを、みなさんはどう感じられるでしょうか?ここからは個人的な見方になりますが、私の場合は、Twitter 上ではソーシャルメディア、インターネット関係、コンピュータ系のゼミ仲間などと多く繋がっているため、気に入った新サービス、ブランド、面白い企画などを次々 RT できる一方、Facebook では主に興味も生活スタイルも異なる「古くからの友人」とも多く繋がっているため、休日の過ごし方など、よりプライベートな話題が多くなっています。

また Twitter では、そのフロー志向ゆえ、プレゼントキャンペーンなど「その場限りの投稿」も比較的しやすいのですが、Facebook では多くの「友人に」「後からも見返される」ことも考えると、ウォールへ投稿の内容は、少し選びがちなのが現実です。

今いちど注目する Twitter上でのバイラルキャンペーン

・・・というやや私見もはさんだ見方からすれば、この半年ほど「去年は Twitter だったが今度は Facebook でしょ。」という、いかにも「雑誌を読んだ上司から言われました」的な流れをいろいろな方からうかがう機会があるものの、

  • interest graph づたいに認知度を広める方がターゲット顧客層により的確にリーチできる点
  • アカウント使い分けやフロー傾向の強さゆえ気軽に RT できる点
などから、Twitter 上でのバイラルキャンペーン (いわゆる「つぶやきキャンペーン」)は、今一度見直しに値するのではないかと考えています。

また、キャンペーンの施策側から見れば、

  • Twitter は、コアとなる仕組みが Facebook と比べてシンプルなため、キャンペーン設計が簡単 (Facebook アプリは自由度が高すぎて逆に企画が大変)
  • Twitter では、パブリックなつぶやきを検索できるので、フォローを通じて直接リーチはしていない潜在顧客の声も拾うことができる
などの点も、意外と重要かもしれないですね。

Lekumo(ルクモ)キャンペーンビルダー : 最後はすこし宣伝ですが・・・^^;)

というわけで、ここまで書いた内容の最後に「結局宣伝かよ!」とツッコまれそうですが ^^;) 上記の内容は弊社の製品戦略検討の中で、かなりニュートラルに調査・議論したものでございます(キリッ!)。その結果、「やっぱりTwitter上のキャンペーンっていいよね!」ということで・・・・

弊社シックス・アパートでは、いわゆる「Twitterつぶやきキャンペーン」「Twiter診断キャンペーン」などのキャンペーンを非常にカンタンに構築・運用・効果測定できる ルクモ(Lekumo)キャンペーンビルダー というサービスをご提供しております。

Lekumo (ルクモ) キャンペーンビルダー Webサイト
Lekumo キャンペーンビルダー - http://www.sixapart.jp/lekumo/cb/

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