キリン/JAL/無印/goo など、いまどきのTwitterキャンペーン、事例で見るトレンド

こんにちは。シックス・アパートでマーケティング担当をしております、伊藤大地です。

今日は、もはや導入期を過ぎて、一般的になったといってもいい、Twitterを使った企業キャンペーンの最新事例をいくつかご紹介して、キャンペーン設計のトレンドを探りたいと思います。

Twitterを使った企業キャンペーンというと、a)製品や企業のブランディングや認知を目的としたものと、b)直接的な販売につなげる販促を目的としたもの、の大きく分けて2種類に分類できます。

a)のブランディング・認知のタイプは「公式アカウントをフォローして、(製品名)をつぶやこう」といった「フォロー&ツイート」スタイルのもの、製品が登場するシーンを想起したお題にハッシュタグを付けてつぶやく、「大喜利」スタイルなどが一般的です。一方、b)の販促タイプには、リツイートやフォローでクーポンやポイントを発行するスタイルですね。

このあたりの、王道パターンについては、弊社の高橋が『Web担当者フォーラム』の「Twitterキャンペーン認知&販促型 7つの実例+8つの企画チェックポイント」という記事でまとめていますので、ぜひお読みください。

今回はこの記事を前提に、百を超えるキャンペーン事例をチェックしましたが、成功に至らないものが多いこと多いこと......。Twitterキャンペーンが珍しくもなんともない今、ユーザーはそう簡単にはフォローも拡散もしてくれません。そうした中で、盛り上がりを見せるキャンペーンは、どこが違うのでしょうか。なお、Twitterのユーザー数推移のグラフは、「Social Insight」というサービスで計測しています。

ユーザー同士をつなぐ架け橋になるキリンのキャンペーン

キリンが新しく発売した、プレミアムビールのキャンペーンです。TwitterまたはFacebookのアカウントを使って、1日に1回、キャンペーンサイトで抽選に応募できます(TwitterとFacebook、両方を使えば1日に2回ということになります)。

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当選した場合、ビール1本の引換クーポンがもらえるのですが、ここからがこのキャンペーンのミソ。当たっても、当選した本人がクーポンをもらえるわけではないのです。つぶやきやシェアという行動を通じて、当選者がTwitterまたはFacebookの友だちに、クーポンをプレゼントする、という仕組みになっています。もらう側の人は、「知り合いからクーポンのプレゼント」というメッセージによって、商品を認知することになります。企業による投稿が、友人の手でRTされたりシェアされて伝わってくるよりも、友人からのプレゼント、という形のほうがよほどうれしい「認知」であることは、言うまでもありません。

1日2回までという応募に制限があるため、ユーザーが繰り返し訪れれば、インプレッションも向上します。また、クーポンをもらった人も、「お返し」するためにキャンペーンに参加するかもしれません。さらに、クーポンの受け渡しにTwitterやFacebookを使うことで、当選者ともらった人以外の第三者にもキャンペーンの存在を告知できます。一度、フォローしてRTしたら終わり、いいね!したら終わり、ではない多重的な設計がされているのです。

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このキャンペーンでは応募の段階では、公式アカウントをフォローしたり、Facebookページを「いいね!」する必要はありません。にもかかわらず、フォロワーは2万以上、Facebookページの「いいね!」数は8千を超えています。Twitterで、 beertofriends と検索すると、クーポンをあげた人、もらった人のあたたかいやりとりが、山のように出てきます。キャンペーンの存在が、コミュニケーションのきっかけ、媒介になっているのです。

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企業側が発信したい内容を押し付けるのではなく、ソーシャルグラフ間のコミュニケーションの手段として、商品やキャンペーンを埋め込む形になっているのが特徴です。

他の企業を巻き込んで「結果的に」プレゼンスを伸ばすジャルパック

次は、一見地味に見えるながら、「うまい」と思わせる施策を取っている、旅行代理店「ジャルパック」の事例をご紹介します。実は、ジャルパックのTwitterアカウントを見ていただいてもわかる通り、数万のフォロワーがいるわけでも、RTされまくっているわけでもありません。

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では、何をしているかというと、さまざまな企業に旅行という商品を提供して、その提供先の企業が「ジャルパック協賛」という形で、日々Twitterのキャンペーンを打っているのです。たしかに、キャンペーンを主催しているわけではないので、ひとつひとつのキャンペーンの効果はジャルパックにとって決して大きくはないと想像できます。しかし、ベネッセやコカ・コーラ、ビックカメラなど幅広い分野の企業とコラボすることにより、自社で企画・制作するよりはるかに高い頻度で、さまざまな層に自社の名前と商品を届けることができます。コラボによって他社のチャネルを活用しているのです。また、自社のフォロワー数についてもじわじわと、時間をかけて着実に積み重ねているように見えます。

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「旅行」という、ターゲットが広い商材の強みを活かしたコラボ型のキャンペーン設計と呼べるかもしれません。

メディア掲載で成果を上げる、無印良品とgoo

一方、TwitterやFacebookというツールにスポットを当てるのではなく、キャンペーン自体の企画性、ニュースバリューを重視するものが増えているのも印象的でした。

無印良品の「2年無料で『無印良品の家』に住む人募集」キャンペーンも、そうした試みのひとつと言えるかもしれません。家賃を2年間払わなくていい、というお得感のインパクトに加え、人気ブランドである無印良品ということも重なって、多くのメディアに取り上げられたほか、ユーザーからも応募ページに、6千を超えるツイート、2千を超えるいいね!が付きました。プレゼントの価値が高額、ということもありますが、雑貨や家電、食品といったありがちなプレゼントでないところがニュースバリューになったポイントでしょう。

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一方、そこまでの大規模でなくてもキャンペーン設計の斬新さで、メディア露出が狙えることを示したのが、ポータルサイト「goo」が開催した、「斬新すぎる『1秒で●●』プレゼントキャンペーン」です。

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これは、今、ネットでなにが話題なのかがわかるサービス「いまトピ」の認知のために開催されているキャンペーンです。あらかじめ指定されたたった1秒の間に、そのとき「いまトピ」で1位になっている話題のワードをつぶやくことでキャンペーンに応募するという仕組みになっています。

応募期間が1秒しかない、というユニークさに加え、プレゼントも話題になっています。ルンバ10台を1名にプレゼントしたり、ネギを刻む業務用機械、使い道のない熊の置物など、明らかに「ソーシャルメディアでネタになる」ことを意識しているのです。

こうしたキャンペーン設計と話題性により、連日、応募開始であり、締め切りでもある夜9時ちょうどに応募ツイートが無数に投稿されることになります。初日はおよそ100件の投稿が集まったようです。ただ仕組みが斬新なだけでなく、「いまトピ」が持つリアルタイム性という本質をキャンペーンに取り入れている点、サービスそのものを楽しみながら使ってもらうよう設計されている点など、ネタで終わらせず、しっかりとサービスを伝える要素を取り込んでいることも見逃せないポイントです。

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王道パターンの生き延びる道は「繰り返し来る仕組みづくり」にあり

最後にユーザーにフォロー&ツイートさせる、王道のスタイルで目立った事例として、日清食品の「ツブヤキソバ」をご紹介します。

これは、公式アカウントをフォローして、指定のハッシュタグをつけてヤキソバについて熱い思いをツイートしてください、という極めて「よくあるパターン」のキャンペーンです。

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私が事例に触れてきた中で、こうした形のキャンペーンは無数にありましたが、よほど景品がよいものか、ブランド力がないと、なかなか投稿数が伸びないというのが現実のようです。

しかし、この日清食品のキャンペーンでは、つぶやきが集まった数に応じて、少なければ3食しか当たらないものが、1000ツイートを超えると5食、2000を超えると10食、10万を超えると最大500食(を10名に!)になるという要素を入れることで、投稿数を増やそうとしています。目標を数値化してユーザーのインセンティブを引き出すようにしているのです。ユーザーの行動を数値にして可視化した上で、目標を設定して行動を促す基本設計は、いわゆるゲーミフィケーションにつながる要素でもあります。

このキャンペーンでは、公式アカウントが積極的にユーザーと交流しておらず、決してフォロワーが多いわけではないのですが、インセンティブの仕組みを取り入れることで、一日に60〜100件のつぶやきをコンスタントに投稿させることに成功しています。

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リアルタイム性の高いTwitterは情報の鮮度が短く、たった1日で話題が終息してしまう、なんてことはよくあることですが、キリンの事例と同様に、何度もチャレンジさせる仕組みを取り入れるのは、キャンペーン設計において必ず考えなければいけないポイントになるでしょう。

もはやフォロワー数やいいね!数だけでは測れない

こうして最新の事例を眺めていると、企業のマーケティング担当者が、ただ単純にフォロワー数やリツイート数を稼ごうとしているわけではない、という事実が見えてきます。ソーシャルメディアの「人と人のつながり」からキャンペーンを設計する(キリン)、提携企業とのコラボで露出を高める(ジャルパック)、キャンペーンの中で製品/ブランドを体験してもらう(goo)など、様々な「次の一手」が見えてきます。

蛇足ながら、私が見た山ほどの「流行っていない」事例に共通する特徴をリストアップして、この記事を締めくくりたいと思います。

  • ユーザー側が一度ツイートしたらそれで完結してしまう
  • 応募期間が長すぎる
  • ユーザー側にRT/いいね!するメリット、面白さがプレゼント応募以外にない
  • ユーザー自身に、面白い言葉や写真を投稿させようとする

最後に......

最後に少し宣伝を。シックス・アパートでは、こうしたTwitterキャンペーンを簡単に立ち上げられるASPサービス「Lekumo キャンペーンビルダー」を提供しています。シックス・アパートでも、このシステムを使って「次世代Web人格ジェネレーター」なんてものを作ってみました。

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