「面白いけど、それだけじゃない」2013年的企業エイプリルフールサイト事例集

こんにちは。マーケティング担当の伊藤大地です。

毎年恒例となっていますが、今年も4月1日は、ネット関連企業を中心としたエイプリルフール特設サイトでさながらお祭りのようでした。そんな中から、「面白いだけでなく、ビジネスのきっかけにつなげている」事例をいくつかのタイプにしつつご紹介したいと思います。

面白法人カヤックは、「4月1日限定で嘘の経歴で採用します」という、「本気」な企画をやっていました。企業側が嘘をつくのではなく、応募者に面白い嘘をつかせる、という試みが非常にユニークでした。会社自体を「面白そうだ!」と思わせると同時に、面白いフィクションを作ることができる人を募集する、という一石二鳥になっている点が特徴です。

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ビール醸造のサンクトガーレンは、「うん、この黒」というビールを4月1日に発売しました。おいおい!といかにもエイプリルフールネタ、のように見せかけて、数量限定で実際に販売を行なっていました。毎年恒例ということですが、サイト上のジョークだけで終わらず実際の製品にまで落とし込んでいるのが素敵です。

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いずれの事例も「いかにもウソのようなこと」で惹きつけ、実はホント、というところがポイントです。仕込みが無駄なくビジネスにつながっています。

世界観まで本気で作りこむ

単なるジョークという域を超えて大規模に作り込まれたサイトが目立ったのも特徴でした。

auは、ベット型のスマートフォンを発売する、というジョークサイトを立ち上げました。コピー、写真から動画に至るまで、徹底的にAppleのサイトの雰囲気を模した完成度の高さが印象的でした。サイト下部には「4/1」の表記をツイートボタンで埋め尽くしたり、「予約ボタン」と称したTwitter投稿ボタンなど、あくまでユーモラスに「シェアしてね」という雰囲気を出していたのが印象的でした。

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さくらインターネットのサイトでは、アニメとストーリーを作りこんでデータセンターの技術力をアピールする内容となっています。SF的な世界観を持った内容で、フィクションでありながら、事実と紛らわしくなく、書かれているのは「すごいデータセンター」の話、というバランス感覚が絶妙です。

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映画「サイレントヒル リベレーション3D」のサイトは、「サイレントヒル」という名前を直訳、「静岡」と文字って、いかにも自治体のWebページのような特撮サイトを作っていました。クリックすると一転、ガラガラとありがちなWebページのスタイルが崩れ、ホラー調の映画のトップページになる演出はまさにエンターテイメント。もともとフィクションである映画と、エイプリルフールの相性の良さを感じさせる企画でした。

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サイボウズのサイトの、悪の組織がグループウェアを使ったら?という、ジョーク×実際の製品という掛け合わせは、はじめから製品を押し出しているので、「なんだ宣伝かよ」という騙された感じがないのが特徴です。提案資料のPDFまで用意されているのには驚きました。

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これらの事例に共通するのは、「騙して驚かせる」方向でなく、明らかにジョークとわかるネタを徹底的に作りこむ、という方向性で、大手企業に多く見られるアプローチです。遊び心を出しつつも、信じてしまう人によるデマ拡散を起こらないようにする、という点で、企業としてのリスク管理の面でも優れた施策であるように思います。

ジョークをきっかけに製品を使ってもらう

ジョークで惹きつけ、自社サービスを使ってもらうきっかけにするタイプは、企業が発信するエイプリルフールサイトとしては、王道のアプローチだろうと思います。

ビジネス向けのコミュニケーションツール「ChatWork」のサイトは、サービス名をCatWorkとし、ソーシャルメディアで幅広い層に根強い人気のある、猫を用いたものにして、「ちょっとログインしてみてみよう」とうまく誘導しています。

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Googleのサイトでは、パタパタとアナログ感覚で日本語入力ができる「Google 日本語入力パタパタバージョン」を公開していました(他にもマップなどいろいろありますが)。実際にブラウザ上で入力できるようになる作りこみようはさすがといったところ。打ち込んだ文章は、同社のソーシャルメディアであるGoogle Plusに投稿されるようになっています。

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以上、「ウソのようなホント」「明らかにわかるウソを徹底的に作りこむ」「ジョークで惹きつけサービスを使ってもらう」という3つのポイントに絞って、事例をご紹介しました。

なお、2011年の震災以降、円谷プロなどエイプリルフール企画をやめている企業も目立ちます。継続している企業でも大規模案件化してコストがかさんだり、内容によってはデマとして拡散されたり、かえって不快感を与えてしまう、といったリスクがあることも、当たり前ながら付け加えておきたいと思います。

さて、来年はどんなサイトが出てくるのでしょうか。

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