Movable TypeにData APIを作った理由

ひらたです。もう2013年も終わり間際、今日が最後の営業日です。今年は Six Apart にとっては、10周年の節目の年であり、久々のMovable Type のメジャーバージョンアップである、MT6 をリリースするという大きなイベントを無事に乗り切ることができました。おかげさまでMT6は好評でして、私たちもほっとしています。そういう年の終わりなので、MTのことをちょっと書いてみたいと思います。

mt6_square.png

MTのこれまでの強みは、柔軟な静的ファイルの出力と、強力かつ分かりやすいテンプレートエンジンでした。12年もの長い間、ユーザーのみなさんに使っていただけたのは、この基本設計の強みにあったと思います。そのMTに新しい強みを加えたい、そういう想いで創られたのが「Movable Type 6」です。

Movable Type 6は3年9か月ぶりのメジャーバージョンアップです。いろいろな機能の追加や改善だけでなく、内部のコードも見直した結果、高機能の利点はそのままに、動作が軽快になりました。いま好評いただいているのは、こういった部分だと思います。

作り手の側から見たMT6の一番の目玉であり挑戦なのは「Data API」です。REST/JSONで構成される、いまどきの一見、何の変哲もないAPIに見えるかもしれません。しかし、MTと組み合わせたときに、このAPIは素晴らしい力を持つのです。

Data APIでスマホ時代の限られた通信リソースを有効活用

最近のウェブサイトは、いわゆるPCやMacなどのブラウザで見られるだけではなく、スマートフォンやフィーチャーフォンなどのモバイルデバイス、そして最近ではタブレット端末などでも頻繁にアクセスされるようになってきました。それぞれのデバイスで最適なウェブサイトを作ることがベストだと思うのですが、費用対効果を含めて考えると、必ずしも多種多様なデバイスに対して最適化を行うことがベストとはいえないと思います。どうしてでしょう。それはウェブを取り巻く世界の変化に関わっています。

そもそもデバイス最適化というのは、デバイスのスペックだけでなく、その周辺環境を含めて考えないといけません。フィーチャーフォンでは画面解像度や表示文字の桁数、行数まで考えて最適化されていましたし、スマートフォンでも多種多様な環境への配慮が必要です。そしてそれに加えて、通信環境の違い、例えば3Gでは数百kbpsから数Mbps、4GやLTEと呼ばれる最近の通信では最大で100Mbpsを超える通信速度が得られますが、実効レートはそこまでの帯域はないですし、遅延もFTTHなどに比べると大きいです。

2000年代の前半、特に日本においてFTTHの普及により、通信速度が劇的に向上し、かつ低廉な価格で普及しました。この数年、クラウドの進展により、サーバーサイドでのリソースは比較的潤沢に、かつ安価に手にはいるようになりました。こうした背景によってデスクトップやノートでは、サーバーサイドですべて処理してネットワークごしにすべてのリソースを提供することも現実的になりました。言ってみればボトルネックはデバイス側です。

しかし、モバイル環境はちょっと違います。ピーク帯域こそ向上しましたが、いまだ実効レートはADSL並み、そして環境によってはつながらないこともあります。この間、モバイルデバイスは、年を追うごとにより強力なCPU、そして大きなメモリーを搭載して年々機能が向上していきました。いま、モバイルにおけるボトルネックはデバイスではなく通信帯域だと思います。そして、限られている通信帯域を最大限活かすのがData APIです。

MTの強みは静的なページ作成です。パーマリンクもしかり、静的であることが価値なのですが、静的なのは本来は変化の小さいコンテンツだけで十分です。一方コンテンツの周辺に付随する情報は、時と場合で頻繁に変化するので、ページ自体は動的であることにも価値があります。静的なコンテンツ配信と動的なページ作成を両立させる、そのためにいまできるベストな方法として私たちはData APIを創りました。Data APIを搭載することで、Movable Typeのいままでの資産とともに次のステップに進むことができたと思っています。

Data API はまだ出来たばかり、使い方は自由です。どうやって使えばいいですか、と良く聞かれますが、自由なんです。自由であるがゆえに、悩みどころになるかもしれませんが、だからこそ思いもよらなかった使われ方がでてくるんだろうなあ、とチーム一同、ドキドキワクワクしながら、ユーザーの皆さんに期待しています。

来年の1月、MTに携わる技術者やデザイナー向けのカンファレンスMTDDC Meetup NAGOYA 2014が名古屋で開催されます。私はなぜか基調講演をしないといけないといけないのですが、この記事に書いた話のつづきができればいいなと思っています。

それではMTDDC Meetup NAGOYA 2014に参加されるみなさまは、1月にお会いしましょう。また参加されない方も、今後ともシックス・アパートとMovable Typeをよろしくお願いいたします。

それでは良いお年を!

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