「ISO感度も絞りも意味わからん!」なド素人を、最低限まともな写真を撮影できるよう即席特訓してみた

オウンドメディアの記事には画像は欠かせません。900以上のLikeを獲得した、「【モンローはOK、ヘップバーンはNG】 企業サイトで画像を使うとき注意すべき著作権と肖像権のお話」記事では、フリー素材を使うときや自分で撮影した写真を利用するときのコツのお話をしました。

この記事を読んで「自分で撮影した写真に写っている人やものの権利関係は確認できた!けれども、そもそも自分で撮影した写真のクオリティが低すぎて泣ける……」ということはありませんか?

取材をひんぱんにこなす中山は、自社や訪問先の会議室でインタビュイーさんを撮らせていただく機会が多いのですが、自分の写真のレベルの低さに毎度悲しくなります。

でもですよ? 学校に「カメラ撮影法」とか「カメラ解剖学」って授業はなかったじゃないですか。だから撮影法の知識がゼロのまま大人になった人も多いはず。

今回は、シックス・アパート社員で個人としてカメラマンのお仕事もやっている苅谷に、オウンドメディアに掲載しても恥ずかしくないレベルの写真が撮れるようレクチャーしてもらいました。生徒は、写真の知識は全くゼロ!な中山です。写真撮影に苦手意識があるけれど、撮影の必要がある皆様のお役に立てるかと思います。

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「シャッタースピードも感度も絞りも、全く意味がわかりません!」から、はじめます

中山 今日のカメラはNikon S1を使うということですが、コンパクトカメラと同じくらいのサイズのいわゆるミラーレスと呼ばれるモノですね。意外に小さいな…。どれどれ、ちょっとシャッターを切らせてください…パシャパシャ……ほほう、撮れた撮れた。

苅谷 「シャッターを押してみると、シャッタースピードが遅いことに気づいた? 会議室内は照明が暗くて手ブレが起きやすいから、感度上げてシャッタースピードをそれなりに上げないとダメだよ」

中山 「は? シャッタースピード? 感度?」

苅谷 「シャッタースピード、絞り、ISO感度……このへんの基礎的な用語は知ってる?」

中山 「なにひとつわからん」

苅谷 「こりゃ先が思いやられる…カメラ用語の説明を極力省いて、基礎中の基礎だけおさえるね」


苅谷のワンポイントメモ

何を言っているのかわからない!と混乱しても困るのでカメラの設定は説明、変更したくないのですが、どうしても必要なところだけ先にやっておきましょう。カメラに顔認識機能が付いている場合は「ON」にします。

ほとんどの人が気づいていませんが、露出補正機能も普通は備わっていますので、カメラが正しいと思う明るさから+/-のボタンで更に明るく・暗くすることができます。明るさは周りの状況に左右されてしまうので、撮ってみたけど暗かったというよくあるシチュエーションでこの機能を活用することをお勧めします。

今回フォーカスするのは構図、余計な部分の映りこみや人の入り具合、明るさ、ピント合わせといったところまでの「超基礎編」。ちょっと工夫をすれば仕上がりが変わるということを実感してもらった上で、更によくするための機材の選定や最適なカメラの設定、事前の計画などはよくまとまっている他記事がありますので、そちらをご紹介します。

写真が撮れてこそWebライター!本気でライティングを仕事にしたい人のための写真術」(隠居系男子)

3パターンの写真を撮ってみて、改善点を挙げてもらう

オウンドメディアや企業の事例ページによくあるインタビュー記事。会議室で話す様子を撮るパターンが大半ですが、壁が真っ白でのっぺりしてしまったり、照明が不十分で影が目立ってイキイキした表情になりにくいのが中山の悩み。

Nikon S1を使って、よくあるシチュエーションのひとつ、会議室でのインタビューカットにチャレンジしてみます。マーケティング部の中山みことにインタビューしている、という体で撮影してみました。

シチュエーション1:会議室での取材

  • 取材を受けているインタビュイーを撮りたい
  • 表情豊かに、かっこよく撮りたい

中山が何も考えずに撮ったのがこれ。

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なんか遠い? あと、薄暗いぞ…。


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ふむ、コレはわるくないんじゃない?


中山 「苅谷先生、どうでしょう!?」

苅谷 「まるでダメ(バッサリ)」

以下、苅谷先生の解説

1.関係ないモノはファインダーに入れない

  • PCは不要(ロゴシールが付いているなど写す意味があるなら良いが、持参してたらフレーム外にどかしてもらうか、ごく一部しか入らないように工夫して撮影)
  • 写真左のカメラと黒いノートPCもノイズ
  • 椅子とハンガーもジャマ

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苅谷 「ネックストラップも外してもらうほうがいいかな」

中山 「あー、それは気づかなかった…たしかに無い方が映えるよね」

苅谷 「あと、机や背景がただ白くて、ムダに面積を占めている。意味がないから、もっとアップにしよう」

中山 「そうなの? でも映ってしまうからしょうがなくない?」

苅谷 「インタビューの写真って、机はほとんど写っていないものだよ


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※「インタビュー 写真」で画像検索したら、本当に机が映っていなくて驚いた


苅谷 「立って写真を撮っていたけれど、インタビュイーと同じかちょっと下くらいの高さから撮ろう。インタビュイーの目線も上や下(特にパソコン画面)に向いていない、誰かに話しかけている自然な感じが基本ね。たくさん撮影して、変な表情になっているものは全部捨てる


2.動きを演出せよ

  • ろくろを回す、みたいな動きはやっぱりあったほうがいい
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中山 「これは比較的GOODな1枚では?表情もイキイキしていて、手の動きもあり、そこそこアップでムダな要素も少なめだよ」

苅谷 「ポーズはとてもいいので基準にしていいと思う。まだ人物以外が目立つので、これで更にアップに撮るのがいいかな。誰かに話しているのを斜めから撮ったり、正面の写真など何パターンか撮っておくとさらにグッド


3.背景と被写体を同化させるべからず

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中山 「この写真は、頭から矢印が生えてしまってる……」

苅谷 「マジメな表情なのに、頭から生えた矢印が雰囲気をぶち壊してしまっているね。あと、手前のPCがジャマだし、両サイドの椅子やペットボトルもいらない。黒背景だと髪が同化してしまうこともあるよ」

  • ドアを背景から外せるなら外す(角度を変えて撮る)

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中山 「これは頭から生えているとまでは言えないんじゃないかな?」

苅谷 「本来ならNG。読者の意識をインタビュイーの顔に向けさせたいので、顔の周りに目立つものがあるのは避けたいところ。レンズの選択や設定でぼかすなど、目立たなくさせるのも手だけど、今回はそこまで踏み込まないので構図で調整しよう」


4.顔の明るさを重視せよ

苅谷 「撮影用に照明を準備できない場合、顔に影がかかって暗くなりやすいので特に女性撮るときは明るさに注意。顔が暗いのは美しくないし、明るくしないと髪もつぶれて見えてしまう」

中山 「でも、会議室って白背景が多いんだよね」

苅谷 「アップで撮れば背景の白いのは悪いことではないよ。でも、白い面積が多すぎるとカメラが”明るい写真”だと認識して、バランス良くするために全体を暗く補正してしまうので、人が暗くなってしまいがち」

中山 「そういうときはどうすれば?」

苅谷 「露出補正という機能を使う。カメラのボタンに+/-というのがあるから、それを押しながらダイヤルを動かすと+0.3,+0.7...と数字が変化するので、試し撮りの時にどれくらいがいいか調整して顔の明るさを自然になるようにしてみよう」


苅谷さんがお手本として撮ったのがこれ。

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なるほど、ここまで近づいてもいいんだ。机やパソコン等のノイズがなく、被写体がクッキリする。リラックスして会話しているような表情もよい。

シチュエーション2:会社の入口(ロゴ前)

取材後、エントランスの前で会社ロゴと一緒に撮るのも取材では定番の構図だ。キリリと引き締まった、大人の表情を撮りたい。

カメラの設定をなにも触らず、そのまま中山が撮ってしまったのがこれ。

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周囲は明るいのに、顔に影がかかってしまった。なんで?


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ちょっと寄ってみた。でも代わり映えしない……構図は悪くはないと思うんだが


中山 「苅谷先生、どうでしょう!?」

苅谷 「工夫してないよね(バッサリ)」


以下、苅谷先生の指摘

  • 背景に照明がある場所はとても難しい
  • 露出補正をしましょう(人の顔がちゃんと正しい明るさになるくらい)
  • ピントは顔(できれば眼)に合わせる
  • ロゴと人の間の距離は意識しましょう
  • もっとアップで撮ってよい
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  • 手の位置を意識しよう(腕を横にダラーンとさせるのはNG)
  • きれいに見えるようにポーズを伝えてあげよう

中山 「腕の位置はどこにすべきなのかしら?」

苅谷 「前で手を組むのよりは、やや後ろで組むほうがよい姿勢になるかな。ただ、大きくポーズをつけてしまうのもいいよ」

中山 「髪や服の乱れが気になったらどうしよう? こっちはスタイリストではないし、あんまり指示ができないんだけど……」

苅谷 「細かい指示はせずにこれから撮影すると伝えて身だしなみを整えていただくようお願いすればいいし、撮影前にトイレ休憩を入れるのもいい」


苅谷さんがお手本として撮ったのがこれ。

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ポーズが入ることで、より”社員感”が演出できるのだな~。


シチュエーション3:席についてもらって

オフィス内のデスクで仕事している風景も撮らせてもらう場合がある。緊張感のほぐれた、自然体で柔和な表情を撮りたい。

中山が撮ったのがこれ

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今回は、教わったとおりにぐっと寄ってみた。でも、いまいちまだ暗い?


中山 「苅谷先生、どうでしょう!?」

苅谷 「進歩してきたけど、もうちょっと」


以下、苅谷先生の解説

  • 明るさの重要さに気づいているが、まだ不足している
  • 映り込むべきでないモノが写っていないか、よく周りを確認する
  • 机上のマンガ『鉄子の旅』は映っても良いのか?(プライバシーに関わる)
  • 社外秘資料や個人情報がデスクの上やパソコンの画面に写っていないか?
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※面倒でも、傘、カバン等、不要なノイズ要素はいったん(床など)視界の外に置くのがコツ。


中山 「近づく代わりに、ズームを使ってもよい?」

苅谷 「ズームで撮るか、寄るか、どちらでもOK。ただし、スマートフォンなどで近づいて撮ると広角レンズの特性で隅に寄せた人が歪んでしまうかもしれないので注意してね」

中山 「じつは……自分が撮影者の場合、すごく緊張するんだよね」

苅谷 「と言うと?」

中山 「まず撮影技術に自信がない。だからどの角度でどう撮ればいいかわからない。被写体に指示するなんてとんでもない」

苅谷 「ポーズさせる間の空気が苦手になり、とにかく早く撮り終えたい気持ちになる?」

中山 「そう。で、1~2枚しか撮影しないことばかり。”使えるのが1枚もない。どうしよう!”と帰社後に後悔することも」

苅谷 「自信がない人ほど、くどいくらいにたくさんの枚数を撮った方がいい。奇跡の1枚を撮ろうとせず、失敗写真をどんどん捨てる前提で数で勝負すること。それと、1枚撮ってたらカメラの設定がおかしくないことや要注意ポイントをまず確認して問題なさそうなら続きできちんと撮る」

中山 「ヘタほど枚数で勝負するのね」 

苅谷 「インタビューを終わらせる前に、撮った写真に目を通す時間をいただいて、納得できそうなものがなければもう一度撮影をお願いする。そこまでやらないといい一枚を選べない」

中山 「そこまでするものなんだ……」

苅谷 「取材はじめは互いに緊張感があるから、撮影は雰囲気が砕けてきた後半にするのもいいよ」


苅谷さんがお手本として撮ったのがこれ。

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ただ、苅谷さんいわく、「奥にあるドリンク冷蔵庫がジャマなので、これもアリ」と撮影したのがコレ。

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頭が一部分フレーム外に切れてしまっているが、「これくらいなら問題ない」とのこと。


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「ここを見て~」と送るべき視線の向きまで気を遣う苅谷さん。うーむ、撮影とは奥が深いであります。


まとめ

  • 顔認識機能はONにする
  • 不要なモノは撮さない
  • アップで撮ることを恐れない
  • 背景と被写体を同化させない
  • 動きを演出する
  • 露出補正をする(人の顔が基準)
  • ピントは顔に合わせる
  • 撮影前にブレイクを入れて身だしなみを整える時間を設ける
  • 社外秘資料や個人情報の映り込みに注意
  • 技術に自信がない人ほど、たくさん撮って枚数で勝負

以上、撮影のヒントになれば幸いです。

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