「Movable Type とクラウドの融合」にむけて

はじめまして、事業開発担当の 作村 裕史 と申します。目下のところ、シックス・アパート最大のプロジェクトとなっている、「Movable Type とクラウドの融合」についてお伝えしたいと思います。

クラウドコンピューティングは仮想化の技術です。ネットワーク回線の大容量化を伴って時間的・物理的障壁を飛び越える画期的な技術がクラウドコンピューティングです。

クラウドの技術を使って Movable Type をどこにでも届ける

今回はどのようにしてクラウドの技術を使って Movable Type を皆様に送り届けるかをお伝えします。
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まずはクラウドの前提のお話を。

VMイメージの活用でソフトウェア供給の幅がこれまで以上に広がる

クラウド技術では、仮想化を用いることでソフトウェアのインストールが完了した状態のサーバイメージを作成できるのが特長です。サーバイメージは、ISOイメージやVMイメージとも呼ばれますが、ここでは以後VMイメージと呼ぶことにします。

このVMイメージを仮想環境にインポートしソフトウェアがすぐに利用できるようになります。そのような環境があらかじめ用意されていると、ソフトウェアをサーバにインストールする作業がなくなり、制作・開発現場でインストール作業のためのリソース・工数を減らすことができますね。
加えて、ソフトウェアインストール後のサーバチューニングに気を使う必要も無くなります。このようにソフトウェアベンダーにとって、(ファイルのサイズが大きいことを除けば)良いことづくしなのがVMイメージです。これからソフトウェアは、VMイメージとして供給されるケースが増えていくでしょう。

でも......

統一されていないVMイメージフォーマット

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こうした仮想環境を作るソフトウェアは、「VMware」「Xen」「Hyper-V」「KVM」などが代表的なハイパーバイザー(仮想化環境構築ソフトウェア)として挙げることができますね。
それぞれフォーマットが異なるため、VMイメージを作成する際には各1つずつ、計4つのVMイメージが必要です。
また、IaaSと呼ばれるクラウドコンピューティングサービスでは、独自のVMイメージ作成フォーマットを利用します。たとえば、Amazon Web Services はAmazon EC2 の利用者向けに AMI(Amazon Machine Image)を独自のVMイメージフォーマットとして用意しています。自社のインフラに構築するケースが多いプライベートクラウドと呼ばれる仮想化環境の利用も日本では特に伸びています。ISMSやプライバシーマークの存在がその背景として考えられます。
契約や規定の縛りなどの理由で、外部インフラとなるクラウドコンピューティングサービスが使えない案件やプロジェクトが存在する現実をソフトウェアベンダーは鑑みる必要があります。このように、仮想化環境やクラウドコンピューティングサービスは、異なる事情・目的によって使い分けられており、それぞれで異なるフォーマットのVMイメージが利用されている現在、お客様の環境や条件にあわせてソフトウェアを供給することはソフトウェアベンダーにとって簡単ではありません。魅力的な仕組みであるソフトウェアのVMイメージでの提供は、課題を抱えているのです。

そこで......

欲しいのは仮想化フォーマットの抽象化

ハイパーバイザーやクラウドコンピューティングサービス、それぞれに強みと特徴があり、使い分けられている現状を考えると、仮想化フォーマットの統合や標準化にはもう少し時間が掛かりそうです。

私たちソフトウェアベンダーはそれぞれの仮想化環境・クラウドコンピューティングサービスごとにソフトウェアを個別に供給するしかない......

と空を見上げながら嘆くのか......否!

そもそも仮想化とは『あたかも』そこにモノがあるように見せる技術

「実体はないのだから、仮想化環境やクラウドコンピューティングサービスの仕様の差異を抽象化してしまえば、個々のVMイメージの作成と管理に付随する間接コストを最小化できるのではないか?」と仮説を私たちは立てました。

そんなこんなで探し当てたのが仏UShareSoft社の UForge というソフトウェア。詳しくは今月11日のプレスリリースを見ていただくとして。

仮想化フォーマットの抽象化技術を手に入れたことでどのような仮想化環境やクラウドコンピューティングサービスにでも私たちは Movable Type を届けることが可能になると考えました。パブリッククラウド/プライベートクラウド、ハイパーバイザーの種類、クラウドコンピューティングサービスのタイプを問わずお客様は Movable Type を使うことができるようになるのです。

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クラウドの特徴として挙げられる「使いたい時に使いたい分だけ使える」に疑問符

ここで、ひとつの疑問が生じます。

クラウドコンピューティングサービスでは、サーバリソース(CPU、メモリ、ディスク)を抽象化することで適量のリソースを備えた(仮想)サーバを即時に立ち上げることができます。

たしかに「いますぐ」その場でサーバを使えるようになりますが、人(ヒト)が置かれている状況までも考慮した「いますぐ」なのでしょうか。たとえば Movable Type を「いますぐ」用意したい状況。そのような状況に合わせたサーバの管理がいまのクラウドコンピューティングサービスで可能なのでしょうか。

このあたりの話はいずれまたこの場で。さらに、8月4日(土)開催の、MTDDC 2012でも紹介予定ですので、ぜひご参加くださいね。
8月4日(土)MTDDC 2012(Movable Type Developers & Designers Conference 2012)を開催します

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