「ソーシャルメディアとGrowth Hacker(グロースハッカー)」 ― 米国の会話型マーケティング最前線、CM Summit 2012レポート

おはようございます。時差ボケに悩まされて、今週は毎朝3時ごろから活動しているです。

先週はニューヨークで、Federated Media Publishing社(FM社)が主催するConversational Marketing Summit (CM Summit)というイベントに参加してきました。CM SummitはInternet Week New Yorkといって、ある1週間の間にニューヨークでインターネットにまつわるさまざまなイベントが開催される時期に、毎年開催されているイベントで、今年で5回目になります(私自身の参加は4回目。2010年にはCM Summit参加レポートを書いています)。

CM Summitは「Conversational Marketing (会話型マーケティング)」というタイトルが示す通り、ソーシャルメディアなどデジタル技術を利用したマーケティングにフォーカスしたイベントで、FM社の会長でWeb 2.0 Expoのホストなどで知られるJohn Battelle氏が、クライアント企業の著名人からデジタル系のスタートアップの創業者までの幅広い人脈を生かしたスピーカー陣が魅力的なイベントで、業界のさまざまな事例や視点を共有できるようになっています。

CM Summit 2012 Opening Remarks by John Battelle & Deanna Brown

CM Summitが終わった直後、ビデオでBattelle氏が総括しています。2日間で話されていたことのうち、どんどん新しいタイプの(ソーシャル)メディアが出てくる中、マーケターが絶えず新しい手法を使いこなして行かないといけない状況がいつまで続くのか、ということが懸念としてあげられていました(以下のビデオ)。

ソーシャルメディアは一つ一つが違う特性を持ったメディア

実際、2日間のセッションを通じて、「YouTubeやFacebook、Twitterを一把一絡げに『ソーシャルメディア』とするのではなく、それぞれが一つのメディアであると考える必要がある」という話が何度かスピーカーから出ました。「例えば『テレビ』というメディアであれば、ABCでもNBCでも、オーディエンスが異なるだけで、同じ種類のメディアである。だがソーシャルメディアをそのようにとらえて考えては失敗する。それぞれ異なる種類のメディアとして考えるべきだ」ということです。

ただし、これは毎年のように出てくる新しいメディアに対して、その専門家が絶えず必要になる、ということを意味しており、マーケティン部門やデジタル系代理店は、継続的な人的投資をしていかないといけないわけです。

収益化ができていないメディア=宣伝効果が不明というジレンマ

さらにマーケティング部門にとって頭が痛いのが、そうした新しいメディアの広告商品が、本当に効果があるのかが分からないことです。新しいソーシャルメディアを立ち上げるスタートアップ企業をバックアップするベンチャーキャピタル(VC)は、スタートアップ企業に短期的な利益を求めず、代わりにソーシャルメディアの利用者を熱狂させて、利用者数など収益とは関係ないところでの成長性を重視しています。

そのため成長するスタートアップ企業は、ユーザーに支持されており、マーケティング部門としても無視できずにそのソーシャルメディアに人材を投入したり(人的投資)、広告商品を購入したり(金銭的投資)します。しかし利用者の支持を中心に考えているスタートアップ企業は、収益化に貢献する広告商品などにはあまり投資しておらず、広告の費用対広告についても実証されていないことが多くなります。そのため広告主からみると、効果が不明なものに投資を続けなければいけないという状況に対する危機感が切迫感としてあるということです。

Facebookにより新しいソーシャルメディアがさらに増加

今回のCM Summitで個人的に一番興味深かったのが、Ron Conway氏とJohn Battelle氏の対談でした。シリコンバレーのエンジェル投資家として著名なConway氏は「ユーザーに支持されるソーシャルメディアが今後、さらに増えていくのは間違いない」と指摘しています。「Facebookの『OpenGraph』は、多くのスタートアップ企業がビジネスをすることを助ける、インターネットのエコシステム(生態系)に対する非常に大きな貢献だ」(Conway氏)。

Ron Conway & John Battelle

つまり、FacebookのIDを持っていれば、ユーザーにほとんど手間を掛けさせずにユーザー登録ができるだけでなく、Facebookがすでに保持しているデータ(友達との関係など)、そしてステータスアップデートにより、そのソーシャルメディアの情報がFacebook(のステータスアップデート)を介してユーザーの友達ネットワークにより、簡単に拡散することができるからです。

新しいマーケッター=「Growth Hacker(グロースハッカー)」

Conway氏は「これからの成功企業は、"Growth Hacker(グロースハッカー)"を擁した企業である」と主張しています。「ハッカー」という言葉は「システム・ハッキング」のように、日本ではネガティブな意味で使われます。しかし米国ではしばしばハッカーは、技術力を持って困難を成し遂げることができる人、のような意味で使われます。Facebookの上場目論見書の中でも「Hacker Way」という言葉が強調され、上場前日にはHack-a-thon(ハッキング・マラソン)が実施されたほどで、シリコンバレーではポジティブなニュアンスで使われています。

Battelle氏は「おそらく第一世代のGrowth Hacker(グロースハッカー)は、SEO(検索エンジン最適化)を実施するマーケティング・エンジニアだろう」と指摘。「FacebookのOpenGraphというインフラがそろったいま、企業を成長に導ける素養をもった新しいタイプのエンジニアを擁した企業が、シリコンバレーで成功するスタートアップ企業になることができる」(Conway氏)。

逆にGrowth Hacker(グロースハッカー)がマーケティング部門にいれば、次々に登場するソーシャルメディアを使いこなしていけるに違いありません。

ソーシャルメディアを無視してマーケティングを進めることは難しい

他にも興味深いセッションは数多くあったのですが、それについては次の機会に譲るとして、上記の内容をまとめると、次のような感じになるでしょうか。

  • ソーシャルメディアと一口に言っても中身はさまざま。企業は絶えず新しいメディアに備えなければならない。
  • 新しいメディアの活用や広告の本当の効果は見えにくい。しかしFacebookでできたソーシャルグラフはこれからも活用されるだろう。
  • Facebookのつながりをうまくマーケティングに活かせるエンジニアやマーケターが必要だ。

Six Apartブログでは、今後も国内外のデジタル・マーケティング事情について書いていきたいと思いますので、ご期待ください!


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【追記】Lekumoキャンペーンビルダーは、2015年3月31日をもちまして、提供を終了いたしました。


【5月28日追記】CM Summit 2012のプレゼンテーションと動画へのリンクが公開されました。

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