ライターに必要なのは「スキル」か「熱量」か? 30のレベルチェック項目【編集者視点】
こんにちは。フリーランス編集者のアミケンです。
今回は、私が普段ライターにお願いする業務範囲や契約条件の見極めをする際に目安にしているレベルチェック項目と、レベル分けの考え方についてのお話です。
なぜライターのレベル分けが必要なのか
オウンドメディア勉強会や編集塾を開催していると「ライターの探し方と見極め方が知りたい」というお話をよく聞きます。
ライターは特に資格があるわけではないですし、誰でも「自称・ライター」になれる世界です。
私の場合、お仕事として依頼するライターさんは、スキル別にざっくり4段階にレベル分けをしています。その理由は3つあります。
1つ目は、ライターにおまかせする業務範囲を明確にするためです。
一言で「記事執筆を依頼する」といっても、企画、構成、取材、執筆、校正、タイトル付け、進行管理…etcと多岐にわたるプロセスがあります。依頼するライターさんの得手不得手を把握した上で依頼することで、進行管理がしやすくなることや、想定外のリカバリー作業に追われないようにするためです。
2つ目はギャランティ設定を変えるためです。
当然のことですが、スキルレベルが高く、完成品に近い原稿をお願いできるライターさんには高い報酬を、そうでないライターさんには成果物に合った報酬をお支払するのがフェアです。事前にスキルに合わせたレベルを把握しておくことで、ギャランティ設定がしやすくなります。
3つ目はライターさんへのフィードバックを明確にするためです。
レベルによってギャランティが変わるということを、ライターさんにとって「ギャラを上げるために、成長したい!」とモチベーションを高める材料にしてもらえれば、Win-Winな関係が生まれることになります。そのため評価項目はオープンにしています。
プロライターのレベルは3段階
安心してお仕事をお願いできる「一人前のプロライター」の最初のランクを「ブロンズライター」と、私は定義しています。スキルレベルが上がるにつれて「シルバーライター」「ゴールドライター」へと進化していくイメージです。
(※元ネタがわからない人は、ネカフェで1986~1988年頃の週刊少年ジャンプのコミックスをご覧ください)
ブロンズライターの基準は以下の通りです。
<ブロンズライターのスキル>
01. □ 文字おこしが正確、迅速にできる
02. □ あらかじめ用意された情報源を活用して、記事が書ける
03. □ 短く区切ったわかりやすい文章が書ける
04. □ 限られた時間内で一定のボリュームとクオリティの文章が書ける
05. □ 自分で校正チェックができる(する意思がある)
06. □ 的確にタイトル、中見出しがつけられる
07. □ 的確に写真、図版の選定・挿入ができる
08. □ 的確に写真キャプションが書ける
09. □ 取材マナーをわきまえている(服装、 名刺など)
10. □ ガイドラインに沿ってスムースにCMS入稿ができる
11. □ 編集者に設定された納期を守れる(遅滞前に連絡ができる)
上記11項目のうち、8~9項目を満たしている人は、ブロンズライターです。
7項目以下しかチェックがつけられない人は、まだまだ見習いの雑兵ライター級です。
個人的な印象として、クラウドソーシングで出会うライターやブロガー出身ライターには、雑兵ライターレベルの人も多くいました。(上から目線っぽい表現でスミマセン……)上記チェック項目のうち、2~3つしか満たしていない人もけっこういます。彼らならではの光るモノがある場合、ライターとしてのスキルは置いといてお仕事をお願いすることもあります。その場合は、通常よりも余裕をもったスケジュール設定と編集者によるフォローアップを前提に発注しています。
もちろん、誰もが最初は雑兵ライタークラスからはじまります。編集者として、このレベルチェックを参考に彼らが今後伸ばすべきスキルをきっちりフィードバックし、まずはブロンズライターにステップアップしてもらえればお互いハッピーです。
<シルバーライターのスキル>
続いてシルバーライターです。
このクラスの人には、「編集者の考えていることを察して動ける」「自ら編集者的な役割が担える」レベルを期待しています。
01. □ 得意分野を持っている / 自社メディアとマッチしている
02. □ 打ち合わせをもとに、自律的な情報収集ができる
03. □ 打ち合わせをもとに、自分で企画・ 構成案をつくれる
04. □ インタビュー対象者に対して、複数の企画切り口が考えられる
05. □ 企画趣旨にあわせてインタビュー先を複数思いつくことができる
06. □ 取材依頼・ 交渉ができる
07. □ インタビュー対象者の下調べができる
08. □ 構成案に沿ったインタビュー質問案が5~6つ提示できる
09. □ 情報源(出典)のチェックができる
10. □ 写真・ データ等の引用元に権利確認ができる
11. □ 記事タイトル案を2~3つ以上つくれる
12. □ 図版が自分でつくれる
13. □ 納期から逆算したスケジュール設計が自分でできる
14. □ スケジュールの進行管理が自分でできる(納期内で調整できる)
上記14項目のうち、10項目以上を満たしている人は、編集者のとても心強いパートナーです。
そもそも編集者とライターは、どちらが上とか下ということではなく、お互いを補い合い、支え合いながら二人三脚で仕事を進めていく間柄です。
編集プロダクションに所属しているライターさんには、シルバーライター級であってほしいと願うところですね。
最後にゴールドライターです。
元ネタの某マンガ的には、最も神に親しい存在。
どこかの専門誌で編集長を務めていた経験がある人や、その道のプロとして10年~20年以上のキャリアがある大御所級を指します。
このクラスの人は、自己評価もきちんとできていて、その希少性も把握されておられるので、ギャランティ設定がシルバーライターの数倍~1ケタ違うこともあります。
01. □ 自分なりの知見を基にした企画提案能力がある
02. □ メディアの読者を主語にした建設的な提案・ 議論ができる
03. □ メディアとしての方向性を理解した提案・議論ができる
04. □ 根拠ある責任感をもって記事のタイトルづけが自らできる
05. □ 以前担当した記事のPV、コメント等の反響をもとに考察ができる
キャリアの浅い編集者にとっては、ゴールドライターからは教わることの方が多いでしょう。
自メディアの方向性・コンセプト・編集方針などが未整備・未熟の場合は、ツッコミをうけることもしばしばです。
とはいえ、ゴールドライターだからと甘えず、原稿の細かいミスや勘違いのチェック、ライティングやトーンや最新の状況とずれていないかの確認など、気を緩めずに編集にあたりましょう。
オプションスキルと「ライター芸人」について
上記のブロンズ・シルバー・ゴールドのレベルチェック項目とは別軸のスキルというのも存在します。
いわゆるオプションスキルです。
<オプションスキル>
□ カメラマンのアサインができる
□ 自ら撮影ができる(構図や光量調整の基礎知識がある)
□ SNSを活用している(フォロワーが一定数いる)
これまで話してきたスキルレベルとは全く別軸で、特化した才能を持っている人もたくさんいます。
SNSの活用に長けていて、オモシロ企画や妄想ライティングを得意とするライターのことは「ライター芸人」ということもあります。
いま日本でライター芸人として売れっ子なのは十数人といったところでしょうか。彼らにお仕事を依頼する場合には、メディアのトーンに合わせてもらおうとするよりも、彼らの芸風やカラーに染めてもらった上で、NG表現だけは見落とさないように頑張って編集しましょう。
オウンドメディアに欠かせない、社内の執筆協力者
オウンドメディアの執筆を社内のメンバーに依頼する場合は、当然ながらプロのライターさんではないので、上記のレベル判定に当てはめようとするのは合理的ではありません。
むしろ社内のメンバーには、その人が担当する分野について、独自の知見と深い専門性を求めるべきです。上記のレベル分けでいうと、「ゴールドライターのスキル01」が最も重要な項目ですね。
それ以外のスキルについては、編集担当者が極力フォローし、2本目・3本目…と続けて執筆してもらいながら、徐々にブロンズライターになってもらえるように促せると良いでしょう。
小宇宙を燃やせ!奇跡をおこせ!!
今回はライターのレベルチェック方法についてご紹介しました。参考にしていただければ幸いです。
便宜上、スキルに応じてブロンズ・シルバー・ゴールドというレベルに分類しましたが、最も大切なのはコンテンツ制作にかける熱量・情熱・誠実さです。…あえて小宇宙(コスモ)といいましょう。小宇宙を燃焼させれば、スキルを超えてヒットを生み出すことも可能なのです。
最後に、私の好きなマンガ『聖闘士星矢』からのワンシーンを引用して結びとさせていただきます。
なに事もあさくかるく、すべてシャレでながしてしまい、マジになったらそれこそダサい。
はたしてそれが青春を楽しんでるってことなのかな。逆に自分本来のものをなにひとつもたず流行というものにながされて、青春を浪費しているだけなんじゃないかな・・・だけどオレたちはちがうんだよ!この広い大宇宙の中のひとつの生命としていつも心の小宇宙は燃焼してるんだから。(中略)・・・オレはいかなる星の下に生まれようと雄々しく生きてやる!! キズついたままじゃないさ。そのキズをのりこえてさらにおおきくなってやるさ!
車田正美著『聖闘士星矢』(集英社) 文庫版4巻「決戦の時の巻」 より引用
参考記事
商業ライターにおける5つの発展段階について(Publickey私案)Six Apart をフォローしませんか?