MTユーザーのカンファレンス「Movable Type Idea Exchange」がニューヨークで開催されました
みなさん、こんにちは!Movable Typeのプロダクトマネージャー、にっくです。
去る2012年10月18日(木)、MTユーザーのためのカンファレンス、「Movbale Type Idea Exchange」 (以下MTIX) が、ニューヨークのマンハッタンにある OFFSITE という会場で開催されました。
本日は、このカンファレンスについてレポートいたします。
Movable Type Idea Exchange とは?
シックス・アパートは、アメリカへ再進出を行うために、Robert MintonをVice Presidentとして迎え、北米市場での事業を再開しました。今回のMTIXは、Movable Typeを利用しているデザイナー、開発者、ユーザーが集まり、互いに意見交換をしたり、新しいビジネスについて話し合ったり、最新のMT情報を共有することを目的として開催されました。
カンファレンスにはアメリカ国内からの来場者を中心に、ベルギーや日本など、世界中から広く参加者が集まり、国際色豊かなカンファレンスとなりました。
当日は以下の内容で、プレゼンテーターによる発表を中心に、様々な意見交換が行われました。(敬称はすべて「さん」で統一をさせていただきました)
- 基調講演 - シックス・アパートCEO・関
- PowerCMSのご紹介 - アルファサードの野田さん
- GENOVAのサービスご紹介 - GENOVAの平瀬さん
- MT5.2の最新情報、プラグイン、およびコミュニティに関するプレゼンテーション - 私(にっく)
- MTの多言語化に関するお話 - YesItCanBeのMaarten Schenkさん
- MTの事例紹介(Washingtonianなど) - 601amのAaron Baileyさん
- Human Centric Designについて - IDEOのRyan Jacobyさん
- Movable Typeコミュニティに関するお話 - After6のDave Aieloさん
- MTのUSにおける販売戦略について - Robert Minton
- 懇親会
Movable Type Idea Exchangeの詳細
基調講演 - シックス・アパートCEO・関
まずは弊社代表の関から、日本のシックス・アパートがどんな状況になっているかをレポートしました。日本では現在40名ほどのメンバーが働いていること、シックス・アパートは現在MITメディアラボの所長を務める伊藤穣一氏などにより設立されたこと、現在は インフォコム の傘下に入り、新しい体制でビジネスを継続していること、Movable Typeの現状に加えて、Lekumo や Zenback など、他のサービスがどのように展開されているか、などを説明しました。そして日本から参加した各メンバーの紹介を行いました。
PowerCMSのご紹介 - アルファサードの野田さん
続いて、アルファサード の野田さんから、PowerCMS の説明とデモをしていただきました。英語のプレゼンということで、普段とは異なる状況に手こずりつつも、PowerCMSを使った野球のスコアボードのデモや、MTタグを使って構築したテンプレート構造の図解などをしていただきました。その内容に、来場者からも思わず声が上がるシーンがありました。
GENOVAのサービスご紹介 - GENOVAの平瀬さん
GENOVA の平瀬さんは、弊社関との座談会、という形式でプレゼンを進めていただきました。最初は英語の原稿を元に、GENOVAの紹介やGENOVAのサービスについてご紹介いただいていましたが、どんどんプレゼンテーションに熱がこもり、どんなポリシーで、どのような業種に対してビジネス展開をしているか、など、日本語によるアドリブがポンポン飛び出し、それを弊社の関や杉田が同時通訳するような形で進められました。
MT5.2の最新情報、プラグイン、およびコミュニティに関するプレゼンテーション - 私(にっく)
私からは、MTの強みを改めてご紹介すると共に、MT5の最新情報と日本で開発された数々の素晴らしいプラグインをご紹介し、なぜMTが良いのか、を伝えました。そして、日本と世界のMTコミュニティ同士、ともに情報を共有し盛りあげていこう、というメッセージを強く語ってきました。
余談ですが、僕は英語のプレゼンテーションを生まれて初めて行いました。会社の英語ネイティブの同僚にお願いして、自分が書いた原稿を一緒に英訳し、実際にプレゼンテーション練習をして、ダメ出しをしてもらって本番に望みました。練習の甲斐があったのか、アメリカのMTユーザーにも自分の英語を理解してもらえたようで、ほっと一安心でした。
これから少しづつ、日本のプラグインに英語の解説を添えて、開発者向けのポータルサイト、MovableType.org に紹介をしていく予定です。もし、世界中のMTユーザーに、自分のプラグインを紹介したい!! という方がいらっしゃいましたら、ご連絡をお待ちしています!
MTの多言語化に関するお話 - YesItCanBeのMaarten Schenkさん
YesItCanBe のMaartenさんからは、MTの多言語化の構造についての説明と、実際の多言語化サイトについてのプレゼンテーションを行なってもらいました。MTの多言語ファイルのメカニズムを紹介したあと、フランス語とオランダ語の二ヶ国語で運営されているブログ、「Skynet Blogs」 をはじめ、ドイツ語と英語など、複数の言語で運営されているMTのブログサイトを紹介してもらいました。
MaartenさんはMovable Tipsという、MTに関する情報ブログを運営しています。世界中のMT情報から、MTの技術的なTipsまで、幅広いトピックを扱っていますので、ぜひご一読下さい(英語です)。
MTの事例紹介(Washingtonianなど) - 601amのAaron Baileyさん
601am の代表、Aaronさんからは、実際のMTを利用したソリューションの事例紹介をしてもらいました。601amは、MTの案件を数多くてがける、コロラド州の会社です。
プレゼンテーションでは「Washingtonian」という、アメリカの首都・ワシントンD.C.の情報サイトをどうやって構築したか、テンプレート構成やプラグインの利用方法など、詳細に説明してくれました。ちなみに、このWashingtonianは、2012年10月現在、Facebookのいいねマークが11,000個以上もついている、非常に人気のあるウェブサイトです。これだけの人気サイトの裏側を紹介してくれるということで、個人的にも興味深く聞きました。
Human Centric Designについて - IDEOのRyan Jacobyさん
ランチタイムを挟んで、 IDEO のRyan Jacobyさんによる、Human Centric Designに関するプレゼンテーションが行われました。IDEOは、アメリカの著名なデザインカンパニーです。数々のプロジェクトを手がけており、有名なところでは、アップル社の最初のマウス、PowerBookDuoのドックなどに携わったそうです。
Ryanさんのプレゼンは、積極的に参加者に問いかけ、対話を通じながら、デザインの本質、発想方法について一緒に考える、といったスタイルで、個人的にも新鮮なものでした。
(とても早口な英語で行われたため、ついていくのが大変だったのはここだけの話です 涙)
Movable Typeコミュニティに関するお話 - After6のDave Aieloさん
After6 の代表、Daveさんからは、MTコミュニティとUSの状況に関してスピーチしてもらいました。After6は、アメリカのMTユーザーのサポートを長らく担当していた、MTを深く理解した会社です。また、プレゼンテーターのDaveさんは、もともとアメリカのシックス・アパートに所属しておりました。このシックス・アパートブログにも、「変化を起こすには、もってこいの日だ - シックス・アパート(US)元社員のブログ記事より」 という名前の寄稿をしてもらいました。MTに対する愛情は、なみなみならぬ人物で、この日も参加者を前に、熱く語ってくれました。
MTのUSにおける販売戦略について - Robert Minton
登壇者の最後として、弊社Robertより、アメリカにおけるMTの販売戦略について説明がありました。数年前にシックス・アパートの本社がSay Mediaに合併され、MTはしばらくアメリカの拠点がない時期が続きました。にも関わらず、MTは今でも著名な企業に使われ続けています。例を挙げると、米出版社の最大手 Conde Nast、放送局大手の NBC Universal、音楽情報誌の草分け Billboard、ブログニュースメディアの最大手の一つ Huffington Post、ビジネス誌として世界的に著名な Harvard Business Review などです。こういった、大規模案件に対して、いかにMTをうまく活用していくか、といった切り口から説明がありました。
ここでは、来場者と熱い討論がくひろげられました。例えば
- MTは本当に大規模案件向けだけで良いのか? 小中規模案件もしっかりとサポートすべきではないか?
- MTのコミュニティをどうやって広げていく? コミュニティの活性化には、新しいコメンバー、若いメンバーが大事だと思う。そういった層にもきちんとアピールしていくべきではないか?
- MTはPerlをベースに開発が続けられているが、Perlを使いこなせる技術者は他の言語に比べると少ない。どのように考え、カバーしていくのか?
などなど、ビジネスの話からコミュニティの話、そして技術的な議論まで、本当に多種多様な意見が飛びかいました。
やはり、まるごと一日MTづくしのカンファレンスに参加するだけあって、どの参加者も真剣にMTについて、コミュニティについて、そしてMTのビジネスについて、確固とした意見を持っている人ばかりでした。そのため、会場はさながら「ハーバード白熱教室」、あるいはそれ以上に熱のこもった議論が飛び交いました。
懇親会
議論の余韻が冷めやらぬうちに、懇親会に突入。カンファレンスから引き続きホワイトボードを利用して熱く議論を続ける人々や、和気あいあいと四方山話に花を咲かせる人々など、本当に盛り上がった懇親会でした。盛り上がりを反映するかのように、会場では「来年もぜひ開催しよう」「次の会場はどこにしようか?」など、早くも第二回を期待する声があちこちで飛び交っておりました。
二次会
懇親会が終わってもまだ語り足りないメンバーで、さらに二次会。日本チームとアメリカのMTユーザーを中心に、国境を超えた交流は夜更けまで続きました。参加したアメリカのメンバーは、カラオケ好きがたくさんいたようで、「来年は一緒にカラオケ行こう!」と盛り上がっていました。
個人的な所感
カンファレンスのレポートは以上ですが、最後に個人的な所感を付け加え、あとがきにかえさせていただきます。
アメリカに行く前、僕は「どんな人が参加するのだろう?」と考え、参加メンバーを予想していました。シックス・アパートに入る前後から、MovableType.org の掲示板でよく見かける人、個人的にメールで意見を交わす人、あるいは積極的にプラグインを投稿する開発者など、アメリカコミュニティで活発なメンバーは、ある程度名前を知っていたからです。
実際に参加してみると、予想は大いに裏切られました。
もちろん、事前に予想していたメンバーは、かなりの確率で会場に来ていたのですが、今まで名前を知らなかったユーザー、TwitterやFacebookで見かけたことがなかったユーザーが、いっぱい参加していたのです。
平日の一日、それもMovable Typeだけで丸一日費やすカンファレンスですから、来場する人はMTに対して相当に思い入れを持っている人たちばかりでした。そして、今までオンライン上で見かけたことのなかった彼らは、日本から来てくれた我々を暖かく迎え入れ、そして厳しい意見、独自の視点からの意見、そして何よりも、国や言語の違いを乗り越えて、同じ仲間として言葉を交わしてくれました。
日本が開発の中心になったにもかかわらず、彼らは引き続きMTを使ってくれていました。そして、我々の目の届いていない点を厳しく指摘し、かつ期待してくれていました。僕がインターネット上で理解していた、MTコミュニティというものは、実はとても表面的なものでした。実際にアメリカに来てみると、想像以上にたくさんの人たちが、再びMTがアメリカに戻ってきて、日本のメンバーと交流することを待ち続けてくれていました。
僕たちは、互いに名刺を交換したり、Twitterのアカウント情報を交換して日本に帰国しました。今回のカンファレンスは、終わった瞬間に、次の大事なステップへ移りました。国境を超えたコミュニティ作りのために、僕達がやるべきことは、たくさんありそうです。
期待感と、いっそうの緊張感を持って、みんなが国境を超えて交流できるコミュニティを作っていこうと、決意を新たにしています。
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