オウンドメディア「Six Apartブログ」の運営の実態を、INBOUND MKTG 2013でお話しました
こんにちは、シックス・アパートの関です。今週月曜に、インバウンド・マーケティングのセミナー「INBOUND MKTG 2013 TOKYO」のパネルディスカッションに呼んでいただいたので、Six Apartブログの内情を包み隠さずお話してきました。
なおインバウンド・マーケティングとINBOUND MKTG 2013 TOKYOについては、火曜に公開したブログ記事インバウンド・マーケティングはメソッドではない。「考え方」であるをご覧ください。
社員の自社製品への愛情や、業界知識を活用
Six Apartブログの立ち上げにまつわる過程と思いについては、実際に立ち上げのときの内容を初代編集長が綴った人に読まれて育てる企業オウンドメディアのはじめ方~Six Apart ブログ運営7ヶ月を振り返って~が詳しいので、今回お話させていただいたのは「どうやって職務範囲外のブログ執筆を、社内で継続していくのか」という部分に絞りました。詳しくは以下のプレゼン資料をご覧いただきたいのですが、かいつまんでご説明すると以下のような感じでしょうか。
- コンテンツはすべて内製(社員が執筆)
- 月1回の編集会議(リアル)と、Facebookグループ(バーチャル)でネタ出しからアサインまで実施
- 記事執筆は当番(アサイン)制ではなく、本人が書きたいものを書く
- 参加するのが楽しい編集会議を目指している
- 記事や執筆者毎の
ページビューリード獲得数や売上などはシェアするが、プロジェクトのKPIではない - 四半期ごとに社長賞を導入するなど、継続執筆のモティベーションを高める努力
なお当日のプレゼンの詳細は、こちらの資料でどうぞ。パネルディスカッションで、編集会議のファシリテーション・編集長の仕事、に対して関心が高まった。ネタだし、アサイン、記事の仕上げ。たとえば記事の最後に誘導を追加したりするのは書く人は気にしなくて良くて編集長がやる、とか。 #IM2013TOKYO
— スナトモヒサ(@sunatomohisa) February 25, 2013
会場でいただいたご質問への回答などを
当日はパネルディスカッションの時間が1時間しかなかったこともあり、会場からのご質問にお答えするので精一杯で、せっかくTwitter経由でいただいたご質問にご回答できなかったので、こちらでご回答させていただくことにしました。
KPIについて
Twitter経由で多かったご質問が「KPI(重要業績評価指標)」に関するものでした。#IM2013TOKYO 【質問】シックス・アパートの関さん、御社のSNSの運用は非常に勉強になりました。SNSの運用において、具体的な目標なりKPIを定めていらっしゃるのでしょうか?
— 野口 卓也 (@nogutaku) February 25, 2013
当初はやはりページビュー数(PV)や訪問者数です。「Webサイト改善は図を描きなさい!」 〜 SiteCatalyst達人から教わった分析フレームワークでも後半で解説していますが、Six Apartブログの主な目的は「集客」です。
シックス・アパートでも、サイトを「集客」「誘導」「販売」「サポート」の機能ごとに分類し、KPIを整理する試みを始めています。まず、ソーシャルメディアやオウンドメディアで、多くの方に弊社について知っていただいて、それをきっかけに製品の認知・販売へとつなげていく。そして既存のお客様へのサポートを通じて、また弊社のサイトに戻ってきていただく、といったサイクルを想定して、解析する数値の吟味や、改善サイクルの構築を進めています。
たとえば、このSix Apart ブログは「集客」の機能を受け持つサイトとして、PVはもちろんのこと、他の弊社のサイトへどれだけ誘導できたか、繰り返し訪れていただいたか、など「入り口」としての機能を評価しています。
実際、Six Apart ブログの記事を入口ページにして、リードや購買などのアクションが出る例が多くなり、編集部としては「意外な効用」と喜んでいますが、Six Apart ブログのKPIやKGI(重要目標達成指標)には設定していません。
質問 ブログ編集会議で、KPIばかりだと出席率が下がりそう、とのことでしたが、具体化にそのKPIとは、いわゆるPVとか売上、いった要素なのでしょうか? #IM2013TOKYO
— Taka Mochizuki (@takamitsuuuu) February 25, 2013
ということで、PVはKPIですが、売上はKPIやKGIには設定していません。ただ「ブログ編集会議で出席率が下がりそう」というのは、3回目ぐらいの編集会議で、PVなどが大きく伸びてきたことに喜んだ編集部が、KPIの報告を多くしたり、PV狙いの記事のネタばかりを出したところ、「私の書きたいことは、きっとPVが狙えなさそうですね」という雰囲気が見え隠れし始めたことです。
編集会議への出席は必須ではありません。「社員が自発的に、自分の伝えたいことを楽しく書く」という雰囲気が失われて、編集会議への出席者が減り、記事も減ってしまっては元も子もありません。
「継続」へのモティベーションを維持するために、その後、編集会議ではPVなどのKPIの話は最小限にし、ネタのブレストなど「楽しく意義のある会議」になるように努めています(ただし「過去最大のページビュー」などの高揚するKPIレポートは欠かせません)。
このあたりは、Six Apart ブログの立ち上げを綴った、初代編集長による人に読まれて育てる企業オウンドメディアのはじめ方~Six Apart ブログ運営7ヶ月を振り返って~に詳しいです。
編集会議の進行について
[質問]Six Apart 関様>SAブログ編集会議のざっくりした進行手順(時間配分など)をおしえてください。#im2013tokyo
— あみけん (@amigoken) February 25, 2013
初期はいろいろ試行錯誤していましたが、現在は次のような進行になっています。
- 前月のKPIの報告(編集部より) - 10分ぐらい
- ネタ出しなどのブレスト(という名の雑談) - 30分〜45分ぐらい
- 向こう2週間程度の執筆記事と執筆者の確認(編集部より) - 10分ぐらい
とはいっても、KPIの報告中にも参加者が「報告にはないんですが、この数字はどうなってますか?」とか「ああ、この記事が伸びるとは思わなかったよね。じゃあ、こんな記事もありかな?」といった感じで、いきなりネタ出しのブレストに脱線することもしばしば。
とにかく、あまりフォーマットを決めて、参加するのがおっくうや窮屈にならないように、最大限の配慮をしています。なんといっても、編集部(私と編集長)以外は、すべて自主的に参加・執筆していただいていますので。
編集会議の様子は、Six Apart ブログの不定期連載記事「Six Apart ブログ編集会議」からもご覧いただけます。
ペルソナについて
#im2013tokyo【質問】Sixapartブログを書くにあたりメインのターゲットはどなたを設定されているのでしょうか?技術者?ブロガー?企業の特定の部署の方?
— tomohwa0 (@tomohwa0) February 25, 2013
これは質疑応答の中でもお話しましたが、「記事ごとにバラバラ」です。エンジニアがある技術について書きたいときはターゲットはエンジニアですし、マーケターが最新のマーケティング手法について書く場合はマーケターがターゲットです。
ただし執筆記事の内容をブレストの中で決めていくのにあわせて、「その記事は誰に何の目的で読んでもらうのか」を編集部側では強く意識しています。記事のドラフトができた後の編集でも「その記事は誰に何の目的で読んでもらうのか」についてを意識して、場合によっては構成を変更することもあります(ただし、元々の執筆したい「動機」を生かした形にしますが)。
【シックスアパート関さんに質問です】先ほどの早起き記事のような(本業に関係ない)エントリーは「はてブ」や外部サイトからのリンク、検索等によってPVは上がりますが「一見さん」が多くリード(再訪問者)獲得につながりにくいと感じています。ご意見頂けると幸いです #IM2013TOKYO
— 池田紀行 (@ikedanoriyuki) February 25, 2013
ご指摘の通り、こういった記事はリード獲得につながりにくいです。実際、トップ20の記事の離脱率は90%を超えています。それでも、こういった記事を公開するのは以下の理由によります。
- 記事執筆のモティベーション維持(「人気記事になって嬉しい!」「Six Apart ブログがみんなに認知された!」)
- Six Apart ブログの認知向上(無味乾燥な業務記事ではない記事があることで、Six Apart ブランドに愛着を!)
- サイトパワーの獲得(いまとなってはSEO的にはそれほど重要ではないかもしれませんが...)
また前提として、リード・ナーチャリング以降のプロセスは、マーケティング部門が「業務」として実施していますが、Six Apart ブログの原動力は「業務外」のモティベーションの部分になります。
これが重要なのは、成果がなかなか出にくく、さらに効果測定も難しいオウンドメディアの運営の部分から、なるべく「ROI(投資利益率)」の議論を遠ざけたいという理由もあります。
リード・ナーチャリング以降のプロセスではROIを見ていますので、マーケティング施策全体としてのROIは算出可能です。今回の「オウンドメディアの運営」という単独でのROIは見ていません。
【質問】これからインバウンドマーケを始めると結果が出るまでに時間がかかりますが、そのコストをどう社内説得すればよいでしょうか。特にROIの算出を求められる場合。 #IM2013TOKYO
— IDT (@idetam) February 25, 2013
#IM2013TOKYO 【質問】登壇者の皆様、社内ではインバウンドマーケティングという考え方はどの程度社員やスタッフの間でコンセンサスを得られているでしょうか?企業内で考え方を浸透させるための取り組みなどがあれば教えてください。運用の外注と内製化についてのお考えも知りたいです。
— 野口 卓也 (@nogutaku) February 25, 2013
うーん、プラスアルファで楽しくやるインバウンドマーケティングと、成果をがっつり期待されてやるインバウンドマーケティング。スタンスの違いによる温度差を感じます。#IM2013TOKYO
— リョーコ (@ryocoi) February 25, 2013
ということで、シックス・アパートでは、オウンドメディアの運営に「業務リソース(主にコスト)」をなるべく充てないことと、マーケティング施策全体でのROIを見ることで、説得材料にしています。「ブログを書くのが好きで入社した」という社員が多いシックス・アパート独特の有利な面はありますが、そのためのキーワードとして「継続性」と「モティベーション」を重視しています。参考にしていただければ幸いです。
記事を書くヒマがない!
【質問】忙しくてブログを書く余裕がないという企業はどうやってインバウンドマーケティングを始めていけばいいでしょうか? #IM2013TOKYO
— Kotaro Inoue (@meaningfree) February 25, 2013
これは本当に時間がなければ外注化するしかないのでしょうが、Six Apart ブログではなるべく「一粒で二度美味しい」というテーマを探しています。例えば、Zenbackというサービスでは、TwitterやFacebookとのサービス連携を実装していますので、プロダクト担当者はこうしたサービスの仕様を調べて、Zenbackの仕様に反映させています。
その際に調べた内容は、他の社員にも共有するわけですが、その共有を社内文書ではなく、Six Apart ブログに執筆することで済ませてしまうわけです。例えばog:image 徹底解説、意味も設定画像スペックもこれでばっちり!みたいな感じです。
他にもご質問があれば
というわけでご質問を受けてから3日も経ってしまいましたが、なんとか回答をまとめることができました。ほかにもご質問があれば私のTwitterアカウント @nseki までメンションを飛ばしていただければ、可能な限りご回答させていただきます!<3月5日追記>
同じパネルディスカッションに登壇していたガイアックスの栗原さんが、Twitterからの質問に回答されていました。こちらも参考になると思います。
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