シリコンバレー企業に見る、高度成長期の日本企業の面影

こんにちは、米国出張から帰ってきたばかりで、まだ絶賛時差ボケ中のです。

今回の出張は、前半がシリコンバレー、後半がニューヨークと、米国の西と東に滞在しました。なおシリコンバレー地域では、地元のことを(サンフランシスコ)ベイエリアなどと呼ぶのが一般的みたいです。

元々シックス・アパートは2001年にサンフランシスコで起業し、2003年には東京、2004年にはパリ、2008年にはニューヨークにオフィスを開設したこともあり、今回の出張でも元社員や顧客に数多くお会いしました。

さて今回は前半のハイライトである、シリコンバレー企業のオフィス巡りをお届けします。

今回はシリコンバレーの“大企業(上場企業)”であるApple、Google、Facebookと、“成長株企業”(非公開企業)であるTwitterとEvernoteのオフィスを訪問しました。

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南北100キロにおよぶシリコンバレー

まずシリコンバレーの概要ですが、北はサンフランシスコから南はサンノゼまでの南北100キロ弱のエリアを指しており、サンフランシスコなどの一部の都市部を除けば、オフィスはクルマでないと通えないほど分散・点在しています。

今回の企業のうち、サンフランシスコ市内のホテルから徒歩やバス、タクシーで実質的に訪問可能なのはTwitterのオフィスだけです(Twitterも会社が大きくなりサンフランシスコから引っ越そうとしたそうですが、サンフランシスコ市が優遇策を打ち出して残った経緯があります)。

とはいっても、若い人の多くは、夜に気軽に飲みにいけるサンフランシスコ市内を好む傾向にあり、若いエンジニアを抱えるネット系のスタートアップの多くは、サンフランシスコ市内にオフィスを構える傾向にあります。シックス・アパートも起業当初は空港近くのサンマテオにオフィスがあったのですが、当時の社員平均年齢は25歳以下と若く、彼らの声を取り入れて2005年にサンフランシスコ市内に移転しました。

必ずしもすべてがそういうわけではないですが、小さいウェブ系のスタートアップはサンフランシスコ市内にあり、そのすぐ南のサンフランシスコ空港周辺は、Oracleに代表されるソフトウェア企業が多く、さらに南に行くとCisco Systemsなどのハードウェア系やIntelのような半導体系の企業が多くなる印象があります。

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Facebook_bottom
Facebook社の看板。Sun Microsystemsの旧オフィスと看板を引き継いだため、裏側を見ると今はなきSunのロゴをしのぶことができる

またウェブ系でも、Yahoo!やGoogle、Facebookなどは従業員の数もケタ違いに多いので、南の方に大きな「キャンパス」を構えています。ただし、前述したとおり、若いウェブ系の人たちはサンフランシスコ市内に多く住んでいるので、こうした企業はサンフランシスコ市内からキャンパスへの通勤をサポートする「専用バス」を走らせているそうです(それも無線LAN完備!)。

高度成長期の日本企業のよう!?

多くの方がシリコンバレー企業のオフィスを訪れると、ビックリするのが「とても職場とは思えない」というその雰囲気。Googleなど一部の企業にはカフェテリアがあって3食「無料」で食べられるというのは、マスコミなどでも少しずつ紹介されるようになっていますが、飲み物類が無料で好きなだけ飲める、というのはかなり小さな会社でも一般的です。

私たちがGoogleのキャンパスを訪れた午後2時ごろも、ちょうどGoogleの社員とおぼしき人たちがバレーボールに興じていて、日本から視察に来ていた方が「仕事中に遊んでいていいんですか?」「とても仕事をしているとは思えない」という感想を漏らしていました。

Google
"Googleplex"にあるAndroid Lawn Statues

こういった、日本企業のオフィス環境から見ると「非日常」というよりは「非常識」に見えるシリコンバレー企業ですが、よく話を伺うと、そこには理由があります。「食事をしに社外に出たり、飲み物を買いに行ったりするための時間は、実はムダが多いんです。また遊びに行くために早くオフィスを出てしまったらその日はもう戻ってきませんが、会社に遊び場があれば遊んだ後にまた仕事ができます」というのは、当日キャンパスをエスコートしてくださったGoogleの及川さんの談(多少、表現は異なっていましたが)。

また会社で社員同士が気持ちよくコミュニケーションすることで、新しいビジネスアイディアが生まれたり、社員同士の親交が深まる、という効果も見逃せません。

そういえば高度成長期の日本企業には、似たような光景があったと言います。今はかなり少なくなったそうですが社員食堂で社員同士が昼食をとったり、お昼休みに社員同士がバレーボールで遊ぶ、などという光景は、多少テレビドラマによる誇張があったにしろ(なにしろ私はそのころの日本企業のオフィスに行ったことがないので映画やテレビドラマから想像するしかないのです)、決して珍しい光景ではなかったんだろうと思います。

すでに日本企業では絶滅寸前のこうした企業文化が、実はシリコンバレー企業をはじめとする米国企業に移植されていると考えるのは、穿った見方なんでしょうか?

日本企業を徹底分析した米国

1980年代、日本企業に世界市場を席巻された米国は、日本企業が強い理由を分析したと聞きます。その結果、取り入れたものの一つが「ナレッジマネジメント」や「コラボレーション」という考え方です。それまでは社員一人ひとりが個室で仕事をしている印象があった米国企業ですが、最近のシリコンバレー・スタートアップは日本企業さながらの「大部屋」で一緒に仕事をしており、最近は隣の席との間の低いパーティションさえ取り払う傾向にあります。

しかもスタートアップがこうした「効率的」なオフィスにしているのは、スタートアップは資金が足りないからコスト節約のためというわけではありません。社員間の垣根を取り払って、社員一丸となってビジネスの成功を目指していくための、有効な方法論ということです。

「米国企業の社員は定時になると帰ってしまう」というような俗説は、少なくてもシリコンバレーのスタートアップ企業には当てはまらないでしょう。むしろ徹夜も厭わない「モーレツ社員」(死語ですね……)がビジネスを引っ張っているのが、いまのシリコンバレーの強さなのかもしれません。

私たちシックス・アパートも、伝統的な日本企業と、それを取り入れてさらに進化させたシリコンバレー企業の両方の良い点をさらに伸ばしていきたいと思っています。

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Evernoteのオフィスツアーをしてくださった中川さん(左)と柳沼さん。柳沼さんは6年ほど一緒にシックス・アパートで働いた元同僚です

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