「ウッカリ」では済まされない、漢字の変換ミスあるある
漢字の変換ミスをしたメールを送って冷や汗をかいたり、ブログやソーシャルメディアに誤った漢字の使い方をして赤っ恥ををかく経験は、ビジネスパーソンなら誰しもあるのではないでしょうか。カンタンにネットで文章を公開できる時代だからこそ、漢字力や国語力が求められますね。
怖いのが、間違ったまま漢字(&意味)を覚え続け、知らないところで恥をかきまくるパターン。タレントの名前や流行語を間違えるのはまだ可愛げがありますが、ビジネス用語や常識的な漢字を間違えてしまうと、ちょっとカッコ悪いです。
ちなみに、私はちょっと前まで、「こぶしをきかせて歌う」のこぶしを“拳”だと思い込んでいたのです。「手のひらを握りしめてこころをこめて歌う=こぶしをきかせて歌う」だと信じて疑っていませんでした。だってホラ、演歌歌手って拳を握ってうなるように歌うじゃないですか……。
(※ 正しくは“小節”です)
私の無知はさておき、「ビジネス文書でよく出くわす、間違いやすい漢字」をリスト化してみました。
■初歩的まちがい
- 意外にも ⇒ 以外にも
- どちらもよく使う単語だけに、変換ミスに気づきにくいです。
- 若干 ⇒ 弱冠
- インタビュー記事等で、“弱冠(じゃっかん)二十歳”などと紹介するときに使われますが、「若干」と間違えているケースがけっこうあります。若干の意味が、「はっきりしないが、それほど多くはない数量を表す」なので、なんとなく意味合いが通じると勘違いするのかもしれません。
- 今だに ⇒ 未だに
- 意味を考えれば、「今」が誤ちであると気づけます。
- 異和感 ⇒ 違和感
- 異物、異質、異端、異邦人の「異」なので、ごっちゃになるのもわかる気がします。
- 感違い ⇒ 勘違い
- 変換のサジェストに「感違い」は出てこないものの、手書きだとやってしまうかも。
- 責任転化 ⇒ 責任転嫁
- 「転化」でもそれなりに通じてしまいそうですね。これも手書きだと間違えそうです。
- 時期早尚 ⇒ 時期尚早
- 「じきそうしょう」ではなく、「じきしょうそう」。会話で間違えそう。
■間違っているほうも、正しく思えてしまうパターン
- 心気一転 ⇒ 心機一転
- 心も“気持ち”も~って思ってしまいそう。
- 凌(しの)ぎを削る ⇒ 鎬を削る
- 「しのぎ(鎬)=刀の刃と峰の中間部分の少し盛り上がったところ」が削り取られるほど、激しくぶつけ合って斬り合うこと、が語源だそうです(私、てっきり「凌ぎ」だと思ってました・・・滝汗)。
- 掻(か)き入れ時 ⇒ 書き入れ時
- 掻き集めるの「掻き」ではなく、商売が繁盛し、取引の数字を帳簿などに書き込む機会が増えるから「書き」なのだそう。
- 思考錯誤 or 施行錯誤 ⇒ 試行錯誤
- どれも、「それはそれでアリ」と思ってしまいそうになるのが落とし穴。
- 後ろ立て ⇒ 後ろ盾
- 語源は、「背後を守る盾」であって、誰かが突っ立っているわけではないです。
- 晴天の霹靂 ⇒ 青天の霹靂
- どっちも晴れであることに変わりはないですが。
- 遅れを取る ⇒ 後れを取る
- 遅いのではなく、後(うしろ)にいるということ。
- 一同に会する ⇒ 一堂に会する
- 「校歌斉唱、一同起立!」の「一同」が表す、人が集合しているイメージに引っぱられそう。
- 受け負う ⇒ 請け負う
- 「請け負う=役目や仕事として担当する」であって、レシーブの「受ける」ではないです。
- 肝入り ⇒ 肝煎り
- 「肝を煎る」=「心を焦がす」=「神経を使う」が語源なのだとか。ただ、「肝入り」も間違いではないとする説もあります。
- 興味深々 ⇒ 興味津々
- 興味深い、という言葉があるので紛らわしいです。「津(つ)」は港や船着場の意味で、「津々(しんしん)」と続けると、水があとからあとから湧き出てくるという意味になるそうです。
- 肝に命じる ⇒ 肝に銘じる
- 「銘じる=心(or 胸)に刻む」であって、命令するわけではないです。
- 落ち入る ⇒ 陥る
- 「陥る=望ましくない状態になる、相手の策謀にはまる」であって、落っこちることではありません。
- ご静聴ありがとうございました ⇒ ご清聴ありがとうございました
- 「清聴=自分の話を聞いてくれたことを敬って言う言葉」であって、静かに聞くことではないのだとか。
■正しいのどっちだっけ?と迷うパターン
- 否の打ちどころがない ⇒ 非の打ちどころがない
- 非難する所がないのであって、否定する所がないのではないです。
- 月始め ⇒ 月初め
- 開“始”ではなく、最“初”のほうが正解です。
- 力づく ⇒ 力ずく
- づく=付く、ずく=尽くなので、「ずく」が正解。ちなみに、「力づく」は、「勇気が出る、勢いづく、元気になる」という意味があります。
- 効を奏す ⇒ 功を奏す
- 成功の「功」が正しいです。
- 絶対絶命 ⇒ 絶体絶命
- 「絶対」は、「対立するものが無いこと」で、対語は「相対」です。「絶体絶命」は、文字どおり「体」や「命」を絶つような危機的状況を指すので、「絶体」が正解です。
- 実もフタもない ⇒ 身もフタもない
- 身はモノを入れる容器のこと。「身もフタもない=容器もフタもない(さらけ出している)」となるわけです。
- 是か否か(ぜかひか) ⇒ 是か非か(ぜかひか)
- 「是と非=正しいこと&正しくないこと」。なお、是否という言葉はありません。
- 歯に絹(きぬ)着せぬ ⇒ 歯に衣着せぬ
- 「衣(きぬ)=衣服・着物」。言葉を飾らないで、ずけずけと物を言うこと。
- 一部の隙(すき)もない ⇒ 一分の隙もない
- 一分(いちぶ)の「分(ぶ)=重さ・長さや割合などの単位」です。また、ごくわずかであることの例えにも使われます。
■一字違いで意味が大違いのパターン
- 昔堅気(かたぎ) ⇒ 昔気質
- 「きしつ」じゃなく、「かたぎ」と読みます。「気質=古くから伝わるものを頑固に守り通そうとする気風」です。堅気(かたぎ)だと、「職業や生活が、まっとうで、着実なこと」になってしまい、意味がズレます。
- 木で花をくくる ⇒ 木で鼻をくくる
- 紙が貴重品だった昔は、丁稚には木の棒で鼻水をこすらせたそうです。転じて、「ひどく無愛想にもてなす」を意味するとなりました。
- 所用時間 ⇒ 所要時間
- 「所用=用事、要件」で、「所要=必要とされるもの」となります。
■えっ、そっちが正解なんだ!?パターン
- 言を待(ま)たない ⇒ 言を俟たない
- 意味は、「~するまでもない」となります。
- 嘘(うそ)ぶく ⇒ 嘯(うそぶ)く
- とぼけたり、豪語することであって、嘘をつくことではないです。
- ~の恐(おそ)れがある ⇒ ~の虞(おそれ)がある
- 「心配、悪くなる可能性」の場合は「虞(おそれ)」を使うのが正解。ただ、最近は漢字ではなく、ひらがなで書くことが多いとのこと。
- 聞いた風なことを言う ⇒ 利いた風なことを言う
- 「利いた風なこと=小生意気な、しゃらくさい」。そういえば、マンガ等でも、師匠が弟子(主人公)に向かって、「小僧!利いた風なことをほざくでない!」ってセリフがあったりしますね。
■語源や意味が分かってないと間違いやすいパターン
- 泥試合 ⇒ 泥仕合
- 「仕合=双方が互いに同じようなことを仕掛けて争うこと」であって、試合をするわけではないですので。泥んこプロレスなら泥試合と表現してもいいのでしょうが(笑)。
- 前後策 ⇒ 善後策
- 「善後策=後始末の手段」であるので、つまり事後。事前は含みません。
- こじんまり ⇒ こぢんまり
- 「ちんまり=小さくまとまっているさま」なので、「ち」が正解。
- 泣かず飛ばず ⇒ 鳴かず飛ばず
- ここでの主語は鳥です。3年間、飛ばず鳴かずにいる鳥は、ひとたび飛ぶと天まで上がり、ひとたび鳴けば人を驚かすというたとえです。
【番外編】 企業名
取引先の社名や担当者名、お客様の氏名を間違えると、かなり印象が悪いので、細心の注意を払いたいものです。
- キューピー ⇒ キユーピー
- 日本コロンビア ⇒ 日本コロムビア
- ブリジストン ⇒ ブリヂストン
- キャノン ⇒ キヤノン
- 富士フィルム ⇒ 富士フイルム
- 三菱電気 ⇒ 三菱電機
- ブルドッグソース ⇒ ブルドックソース
- いすず自動車 ⇒ いすゞ自動車
- ビッグカメラ ⇒ ビックカメラ
- 味の素ゼネラルフーズ ⇒ 味の素ゼネラルフーヅ
- 三和シャッター工業 ⇒ 三和シヤッター工業
- 文化シャッター ⇒ 文化シヤッター
- シックスアパート ⇒ シックス・アパート
■まとめ
予測変換機能のおかげで、四文字熟語や固有名詞等は間違えにくくなりました。しかし、漢字の変換ミスまではフォローしてくれないことも多々あります。機械に頼りっぱなしだと、思わぬタイミングで誤用してしまうとも限りません。
先日、文化庁が発表した【平成24年度「国語に関する世論調査」の結果の概要】(
いや~、日本語って、本当に奥が深いですね。日々是勉強あるのみ、です。
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