ANAの客室乗務員に学んだ、ソーシャルメディアでピンチをチャンスに変える方法

こんにちは、ただいまニューヨーク行きの便の中でEvernoteにブログ記事を書き始めた、シックス・アパートのです(編集注: iStockphotoで写真調達していたら1日以上寝かせてしまいました)。

今日から1週間のニューヨーク出張。先週も大寒波が来ましたが、この時期の東海岸は寒いので、本当であれば時期をずらしたいところではあるのですが、そうもいってられないのが出張というもの。でも、まだ出張の10分の1も終わっていませんが、学びの機会をいただくことができましたので、いてもたってもいられずにブログ記事(の下書き)を寝る間を惜しんで機内で書いています。

なぜでしょう? 全日本空輸(ANA)の客室乗務員の方の対応に、当たり前ながら最近見ない光景として印象に残ったので、ちょっとシェアしてみたいと思ったからなのです(現在、フライトの最中に書いているので、降りて冷静になってからと感想が違うかもしれませんが)。

ANA

重なる不幸、高まる危機

今回のフライトは若干、出発時刻が遅れていました。それも当初は予定通りという触れ込みだったのですが、搭乗開始が10分遅れるというアナウンスがあり、そして実際には20分程度遅れて搭乗となりました。それが原因かどうか分からないのですが、搭乗口で非常に不機嫌になっている乗客の方がいました。

時間ギリギリで列に加わった私に事の発端は分からないのですが、すでに地上係員に食ってかかっていて、列から外れた場所に誘導されています。あまりに大きな声で騒いでいるので、列に並んでいた白人の男性が何か話しかけていましたが、それに対して英国人を罵る英語で逆に食ってかかっていました(白人の男性は英国人だったようです)。その方は、見た目は日本人で日本語が堪能のようなのですが、帰国子女の方なのか、日系アメリカ人の方なのか、英語の方が心地よいようでした(メニューもすべて英語ページをご覧でした)。

飛行機に搭乗してみると、その方は(なんと)斜め前の席になりました。ただ、その方が通路をブロックしていてうまく通れなかったとき、その方は日本語で「すみません」と恐縮されていて、私自身はそれほどの警戒感を持たなくなりました(米国人なら、通路をちょっとブロックしたぐらいで、それほど恐縮するようなことではないと思うと思いますので...)。

危機対応のエスカレーション

悪いことは重なるのかな、と思ったのは、最初の食事の時間がまさに終わろうとしているころです。その方は搭乗早々、就寝してしまい、最初のディナーの間、ずっと寝ていらっしゃいました。私も食事(いわゆる晩ご飯)を堪能し、食べ終わって周りを見る余裕が出てきたころ、第2の事件は起きました。あろうことか、若い女性客室乗務員の方が、その方の飲み物を片付けようとして、右手や洋服にその飲み物をこぼしてしまったのです。

やり取りの詳細は聞こえませんでしたが、件の男性は機嫌を損ねている模様。まぁ、それまでに不快なことがなくても、飛行機に乗って服や身体が濡れてしまったら、あまり気持ちのよいものではありません。ましてや、すでに搭乗前からご機嫌ナナメなご様子。何が起きるのかと内心ドキドキしながら成り行きを追っていました。

するとその若い客室乗務員の方は、謝罪した後、すぐにギャレー(配膳するための食べ物や飲み物をストックしている場所)に戻りました。その後、若干のラグがあったので、思わず飲み物をかぶった乗客の方に(その方は呆然としていた)、ティッシュを渡そうとティッシュを探していると、ギャレーから上司と思われる客室乗務員の方が出てきて、笑顔で対応を始められました。

その方の対応は、さまざまなクレームの対応をこなしてきたという自信がみなぎる対応でした。変に下手に出すぎるわけでも媚びるわけでもなく、でも笑顔は絶やさずその乗客の方の不満の矛先を先回りするような対応。そして、なによりこの記事を書こうと思ったのは、それ以降、トラブルに巻き込まれた若い客室乗務員の方にその方の対応をさせないようにしたことです。

その上司の方が休憩か何かで出てこなくなった後も、件の若い客室乗務員の方(当事者)はそのエリアの担当ながら、そのお客さまの対応は、英語がネイティブと思われる他の客室乗務員の方(それもそれまではこのエリアにいなかった)が自然に引き継いでいました。

そのお客さまは、その後、特に機嫌を損ねるでもなく、今も気持ちよさそうに寝てらっしゃいます(笑)。

エスカレーションの意味を考えなおす

よく「クレームはビジネス上のチャンス(=ピンチはチャンス)」と言います。しかし、そうしたチャンスの果実をものにするためには、こんな対応が自然にできる組織づくりと風通しの良さ、そして一人ひとりの責任感が重要になると思います。

今回のケースも、その上司の方がすぐに対応し、不満が燎原の火のごとく広がる前に沈下できたのは、日ごろからクレーム対応を「チャンス」として組織的に対応している成果なのではないかと想像しました(本当かどうかは分かりません。所詮、たまにANAに乗る、にわかANA Flyerなので)。

おそらくそのお客さまも、搭乗後のANAへの印象は悪くないはずです。なにより、そのお客さまの斜め後ろに座っていて一部始終を見た私が、ユナイテッド航空の最上級マイレージ会員待遇を諦めて、ANAのマイレージ会員になろうかと思ったぐらいですので(笑)。

今回、なぜこの話を取り上げたのかは、実はこういう「クレーム対応をファンづくりに結びつける」という「ソーシャルメディアのTIPS」が、実はお客さまと日々、面と向かうサービス業の方々の長年の経験と知恵に裏打ちされているのだということを再認識したからです。

今までホワイトカラー部門、特にマーケティング部門は、顧客へ接触する戦略的な部門でした。ただ一方で、実際に顧客との間に、リアルな触れ合いや双方向なふれあいを持てない部門でもあり、ソーシャルメディアやオウンドメディア時代より以前は、ともすれば「頭でっかち」になる可能性を秘めた部署でもありました。

すでにソーシャルメディアやオウンドメディアで、お客さまとの間でトラブルが発生する事案を抱えた方も少なくないと思います。そして、それは不可避なことだと思います。

でも、今回のANAの客室乗務員の方の対応は、私にマーケティングやソーシャルということの意義を再認識させていただいた、非常に意義深いものでした。

ということで今回のニューヨーク出張は、まだ初日が終わってもいないわけですが、いろいろと実り多そうな気がしてきました!

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