コンテンツマーケティングが失敗する理由は、「企業都合の思い込み」のせい(Moz社スライドより)
「想定読者(見込み顧客)にとって価値あるコンテンツを提供すれば、きっと成果に結びつくはず!と期待して、コンテンツを提供しているのに、なかなか結びつかない orz...」
こんな風に、期待した結果を出せずに四苦八苦している方もいらっしゃるのではないでしょうか。よくある失敗理由を、5つにわかりやすくまとめたスライドを見つけましたので、ご紹介します。
スライドの作者は、Web担当者フォーラムの連載記事でもお馴染みの、SEOやインバウンドマーケティングの情報やツールを提供する企業 MOZ のファウンダーでありブロガー Rand Fishkinさん(以下、ランドさん)。彼が公開している「Why Content Marketing Fails (なぜコンテンツマーケティングは失敗するのか)」を、個人的体験談に絡めてご紹介します。
たいていのコンテンツマーケティングの努力はうまくいかない
86ページあるスライドの中から、もっとも印象深かったひとつに絞って紹介しますね。
冒頭(P4~P8)でランドさんは、「たいていのコンテンツマーケティングの努力はうまくいかない」と断言します。思い切って投資して、高い期待値とともに、張り切ってローンチにこぎつけても、「さっぱり読まれないし、シェアもされない…」となるケースが多い。
ランドさんは、コンテンツマーケティングが失敗する原因の一つを、「コンテンツマーケティングにまつわる“大いなる思い込み”のせい」と指摘しています。
企業にとって都合の良い行動パターンで読者が行動するという思い込み
ほとんどの企業は、こう考えてしまうそうです。
↓
「コンテンツにたどり着いた初めての来訪者はその場でコンテンツを熟読し、素直にホワイトペーパーのダウンロードバナーをクリックし、すんなりと個人情報を入力して申し込み、ついでにメルマガにも登録し、さらには友人らにツイートをしてくれるはず。コンテンツが面白くさえあれば……」
つまり、
- 「コンテンツを作る」
- 「誰かがクリックする」
- 「(購買や申し込み等の)アクションが起きる」
仮にそのコンテンツが素晴らしい内容で、猛烈にバズったとしても、読者がメディア運営者を信頼するかどうかは別問題。人(&組織)を信頼できると確信できるまでには、ある程度の時間がかかるものです。これって人間関係に置き換えても同じですよね?
では、現実の世界では、読者はどう行動するか?
一見さんがファン化するまでのプロセスは、一直線ではない
実際はこのようなプロセスを経ます。
「さーて、Twitterでも眺めるか……ふ~ん、ハイハイ、へぇ~、なるほどね……。Facebookもちょいと見てみよう……ほほう、こんなニュースがあるのねぇ、○○さんがいいね!している記事タイトルがちょっと気になるからクリックしてみるか……どれどれ……初めて見るサイトだなぁ……だけど、面白いし、響くものがあるから、もうちょい寄り道して覗いてみるか……」
というように、あちこち出たり入ったり、クリックしては離脱したりを繰り返します。
そして、なんとなく気に入ったサイトを一週間ほど眺めているうちに、「なんだかこのサイト、使えるかもしれない」と気づく。
ここからが重要なのですが、読者はいきなりアクション(購買とか会員登録)はせず、いったん離脱します。そして再びニーズを感じたときに、「あのサイトに行きたいんだけど、URLなんだっけ?」となり、自然な流れで検索して、「そうそう、このメディアだった!」と発見し、再訪問するというわけ。訪問者は あっちに行ったり、こっちを寄り道しつつ、一歩一歩メディアと信頼関係を形成していくのです。
つまり、一見さんがファンに成長するプロセスは一直線ではありません。
ランドさんは、その流れをこう表しています。
- 「コンテンツを作る」
- 「誰かがクリックする」
- 「面白いと思ってくれれば覚えてくれる」
- 「別のコンテンツを求めて再訪してくれる(かも)」
- 「コンテンツに繰り返し触れることで、徐々に信頼関係が構築される」
- 「必要に応じて購買(or 申し込み、メルマガ登録)等のアクションをする」
「Content marketing not about convert 1st visit. Or 2nd. Or 3rd.」(コンテンツマーケティングとは、初回(あるいは2~3回程度)の接触でコンバージョンするものではない)From: Why Content Marketing Fails P30
我が事に置き換えてみてください。似たフローで行動しているのではないでしょうか。我々は、たくさんシェアされている記事があるからといって、そのメディアのメルマガをホイホイ登録しませんし、買い物かごに商品を放り込むこともしません。人間はもうちょっと慎重なものなのです。
ランドさんの主張は、私の心に深く刺さりました。というのも、つい先日コンテンツ・マーケティングの効果をまざまざと見せつけられた経験をしたからです。
なぜ、あの業者には発注せず、この業者に発注したのか?
2週間ほど前、自宅のシャワーノズルが壊れました。修理業者を探すため、電話帳で複数の水道工事業者さんに見積もりしてもらったのですが、即発注はしませんでした。値段が妥当なのか(吹っかけられていないか)、腕は大丈夫か(やり逃げされないか)が不安だったからです。
焦っている最中に思い出したのが、2年前に一度だけ屋根の補修工事を頼んだ自宅近くにある家族経営の工務店。「あそこは腕は確かだし、相場から外れた見積もりはしないし、もし問題があればすぐに駆けつけてくれる」という確信があったので、安心してそこにお任せすることにしたのです。
素人感丸出しの手作りニュースレターにハマる
その工務店さんが脳裏に浮かんだ理由ははっきりしていて、彼らのコンテンツマーケティングのおかげです。このお店は毎月欠かさず、A3用紙を二つ折りにした、手作りニュースレターを送っています。
見栄えははっきり言って酷いです。デザインもレイアウトも素人感丸出し、フォントはコーナー毎でバラバラ。ワンポイントのイラスト以外は学級新聞に似たり寄ったりのテキストだらけな白黒印刷。
施工事例とか、節税対策とか、DIY系お役立ち情報がメインの内容。工務店に一見関係のないレシピや睡眠&入浴法といった生活情報、町内会イベント告知も。さらに(どこかで聞いてきたであろう)アメリカンジョークやダジャレコーナーもあって、バカバカしくも、クスッと笑わせられるのです。手作り感が社長らの人柄にマッチしてて、いい味を出しています。いつの間にか、夫婦揃って「今月号はまだかなあ」と、待ち遠しくなっていました。
ニュースレターを通じ、社長は町内会会長を長年続けていること、地元密着で30年以上も同じ場所でビジネスしていること、町内会で餅つき大会を主催して不参加だった家庭に配って回っていること、等を知りました。中の人の素朴な人柄に触れるうちに、「ここは信頼できる」と感じていたのです。
※初めて工事を発注する際に社長に会ったとき、「あれ? 毎年お餅をくれるオッサンだ!」って驚いたくらいですから。(←失礼極まりない)
身を持って知った、“コンテンツマーケティングの力”
屋根工事を頼んだのは2年前でニュースレターは月イチ発行なので、読んだのは24回。その間に「建物や水回りでトラブルがあったら、ここにお願いしよう」と、私たち夫婦の脳内に無意識のうちに刷り込まれていたのです。「効果が出るのに2年もかかるのは長すぎる!」と感じるかもしれませんが、思い返すと半年経ったかあたりで信頼は生まれていた気がします。
アナログな施策ではありますが、やっていることは立派なコンテンツマーケティングです。彼らの(極めて!)オリジナルなコンテンツに繰り返し触れることで、徐々に信頼関係が強化され、ニーズ(水漏れ)が発生したとき、頼む業者はすでに決まっていたのです。コンテンツマーケティングの力を、お客の立場でまざまざと見せつけられた出来事でした。
P31、32でランドさんはこう語ります。
「Content marketing about earing familiarity, trust, and relationship」(コンテンツ・マーケティングとは、親密性、信頼、関係性を築くことである)
「Maybe sale come. Maybe not. Smart cave marketer no care. Smart cave marketer know every visit chance to build relationship. Maybe earn fan. That good enough.」(購買につながるかもしれないし、ならないかもしれない。賢いマーケターはそれで一喜一憂しない。賢いマーケターはひとつひとつのサイトへの訪問が、関係性を作る機会だと心得ている。ファンが生まれればそれで良しとするのだ)
以上、コンテンツマーケティングの失敗理由を5つあげたスライドから、その1つをご紹介いたしました。残りの4つも、誰が読むかを意識していない、拡散経路やSEOの軽視、諦めが早過ぎる、など深く頷ける内容です。失敗事例から学びましょう。
参照情報
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