「B2B事業会社でオウンドメディアを始めたい」相談に長文メールを返した話
こんにちは、Six Apart ブログ編集長&オウンドメディア勉強会主催のことぶきです。
オウンドメディア運営者が集まる勉強会コミュニティをもう4年ほど運営してきたので、オウンドメディアの取り組みについていろんな方とお話をさせていただく機会があります。
先日も、とあるB2Bのサービス提供会社(社員数100名前後の規模の企業)からオウンドメディアの立ち上げに関するご相談をお受けしました。いただいてた質問へのお返事として書いた長文のお手紙を、先方の会社のご許可をいただいた上で、会社名やサービス名などの固有の情報だけ消して公開してみます。
以下、メールの本文です。
ご質問をいただき、ありがとうございます!
いただいたご質問にお答えする前に、私が考えているB2B事業会社のオウンドメディアの役割について少しお話しさせてください。
オウンドメディアの役割について思うこと
オウンドメディアを通して「導入検討企業(潜在顧客)を増やしたい」というご希望であれば、自社が彼らの何を解決するサービスでどんな専門性があるのかを発信し、それを知ってもらうための術をWebメディアを中心に張り巡らせていくことになります。
マーケティングファネルでいう底辺の一番広いところ、ここをさらに広げるのがオウンドメディアの役割だと思っています。オウンドメディアは会社やサービスを知る最初のきっかけ。SNSフォローやメルマガ購読を促すなどして継続的に読者と繋がる入り口を設け、さらに興味を持ってくれた方には資料申込やセミナー参加などでリードにつなげ、そこからのリードナーチャリングはマーケチーム、クロージングはセールスチーム、利用継続はカスタマーサクセスチームの役割、という認識です。
その底辺をさらに広げるためには、Webメディアだけではなく、オンライン/オフラインさまざまな手段を横断的に使って、全方位的にアプローチしていくことになります。
自社を想起してもらいたいキーワードと、それが伝わるストーリーを作る
誰にどんなキーワードと共に自社を想起してもらいたいかを考え、オウンドメディアを中心にあらゆるコンタクトチャネルでそのワードが伝わるストーリーで発信していくことが大事です。
自社の強みと世間的なトレンドを組み合わせて、今一番推したいキーワードを設定しましょう。そのキーワードを中心に置いた上で、自社の独自性、クライアントのよくある課題、選ばれた理由や喜ばれたポイント、それがオウンドメディアのコンテンツになります。
Six Apart の事例では、「セキュリティ」や「情報設計」といった自社サービスに直接関連するワードに加えて、「オウンドメディア」、「テレワーク/働き方改革」と行ったキーワードでも想起される会社になるべく、さまざまなコンテンツを発信しました。その結果として、自社発信のコンテンツをきっかけに、寄稿/インタビュー/登壇/相談をお受けする機会を得られました。
メディア運営を楽しもう!
誰でもこうすれば絶対成功するというベストプラクティスはないのですが、ただ、これをやったらNGというのはいくつかあります。それは、運営側がメディア運営を楽しんでいないことと、読者を見ずに小手先のテクニックに固執することです。
最初は少数でも誰かの役に立てる情報を作り届ける、読者と話しメディアの存在価値があることの実感を得る、それを積み重ねて、メディア運営を楽しんでいきましょう。
では、いただいたご質問にお答えします〜。
いただいた質問へのお返事
Q. コンテンツマーケを立ち上げる時は、どこかのベンダーさんにコンサルに入ってもらうのと、社内だけで立ち上げるのでは、どちらが多いのでしょうか?
A. コアになる人がひとり必要
まず、推進力があってメディア運営にフルコミットする人がひとり必要です。その人がメディアのテーマとなるキーワードの専門家であれば(もしくは、専門家として学びつつ発信していく気概があれば)なおさら良いです。中心になる人がいないと始まらないし、進みません。
社内外のリソースをかき集め、ゴールに邁進していく編集長のポジションでもあります。
外注するのは、メディア運営の周囲の作業で、社内で補えない部分のみをお願いしているようです。たとえば、土台となるWebメディアの制作と改善(サイト自体の構築、MAなどの設計、アクセス解析によるCTAの改善など)、執筆(インタビューや連載記事など)、コンテンツ編集(読みやすい、広まりやすい記事作りをプロの編集者にサポート)などです。
コンテンツ作りも運営も全部丸投げするのはおすすめしません。たくさんのコストをかけてプロのライターに書いてもらう、プロっぽいメディアを目指すというのは、プロの編集者/ライターがいる専門メディアが多数ある中、B2Bの中小規模企業が単体でやるのはかなりの覚悟が必要です。せっかく、専門性のある事業をやっていらっしゃるのですから、自社内のノウハウを発信しましょう。
Q. 月にどのぐらいの記事を公開・更新するパターンが多いのでしょうか。
A. 継続が大事
更新頻度は運営しながら変わっていくのが自然なので、考えすぎず、えいやで決めて良いと思います。たとえば当面は週1くらい更新していくと決め、記事毎の反応の多寡や内容を見て変えていくなど。
更新頻度も重要ですが、オウンドメディアは一朝一夕で効果が出はじめるわけでは無いので継続していくことがとても重要です。継続できる更新頻度を設定するのが良いと思います。
更新頻度を維持するためにコツは、連載記事を持つことです。
Q. 記事を作成・公開するまでの一般的な工程を教えていただけますか。
A. 6段階にざっくりまとめてみました
こんな感じです。
Q. 公開した記事の効果的な露出強化策はありますか?
A. ひたすら手を尽くす
読者の行動を考えまくり、あらゆる手段を実行しまくる、につきます。公開した記事をシェアして誰かに届くのを待つだけでなく、読んでもらいたい人に直接送ることも有効です。もちろん、相手とちゃんと関係性を作ってからが良いです。
また、書いた記事だけに人を集めよう、と考える必要はありません。
作ったコンテンツは手を変え品を変え使い倒せるのが、オウンドメディアのよいところです。自社/他社イベントで座談会、オンラインセミナー、メルマガ、印刷して配布、他メディア寄稿、営業ネタ、漫画/小説にする、などなど。
Q. サイトのファン作りをするために、記事を公開する以外に効果的な施策があれば教えて下さい。
A. 直接会って話す
読者対象者と会って話し、彼らの課題に答えるコンテンツを提供することです。実際に読者対象者と話をすることで、アクセス解析の行動履歴では見えない、情報がたくさん得られます。
Q. 参考になるオウンドメディアの成功事例はありますか?
A. たくさんあります
主に自社の専門分野に関して、社内のメンバーが実感と共に語っている記事が多数あるメディアは参考になるし、内容の信頼感もあります。例えば、「ミエルカ通信」さん、「Developers.IO」さん、「ベイジの日報」さん、「アイデアマンズブログ」さん、「SEO HACKS」さんなど、上げていくとキリがないほどたくさんあります。
ご自身でも、業務スキル的な観点で興味あるテーマのメディアを探してみてください。タイトルの書き方、本文部分の構造、画像の使い方などなど参考になる部分、たくさんあると思います。
と、ながなが書いてしまいましたが、ご参考になれば、幸いです。
以上、メール本文でした。とある企業の事情に寄り添って書いたメールの内容を、B2Bの専門性ある事業を行っていて認知を広げていきたいと思っている会社を想定して編集してみました。
この記事も、Six Apart ブログやオウンドメディア勉強会の取り組みを知ってくださっていた方からよい質問をいただいたおかげで書けました。さらに言うと、その長文メールを書いたことをつぶやいたら、読みたいと言ってくださる方がいたおかげで書けました。
それはぜひ読んでみたいw
— ちゃこちゃん。 (@chaco) 2018年8月1日
コンテンツを作っていく産みの苦しみはあるけれど、公開して想定していた反響が少しでもあればまた頑張ろうと思えますね。こつこつ楽しんでいこう。
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