Movable Type クラウド版がマルチドメイン対応したことで、誰のメリットになるのか
こんにちは、事業開発(ビズデブ)担当の作村です。
Movable Type クラウド版で、マルチドメインの利用と、IP アドレスによるアクセス制限をご利用いただけるようになりました。Basic 認証、サーバー証明書とあわせて利用することで、よりセキュアなサイトを構築できます……が、これによって誰がウレシイのか、どう便利なのかはあまり伝わってこないかもしれません。
シックス・アパートブログ編集部から、「もうちょいわかりやすく説明しろ」と指令が下ったので、解説してみましょう。
中山 Movable Type クラウド版でマルチドメインが使えるようになったけど、これって誰がどううれしいの?
作村 今朝のあさイチ(編集部注:NHKの暮らしに役立つ情報番組)で、セアカコケグモを特集してたんですよ。
中山 は、はあ。
作村 人体に有害な毒も持つセアカコケグモは、日本固有の種ではなく外来種です。これまで、西日本での生息が確認されていましたが、ついに東京での生息も確認され、既に繁殖を始めている可能性が高い、というニュースです。こんな話を訊くと、公園で気軽に子供を遊ばせられませんね。
中山 (とりあえず話に乗ってみよう)絶滅させることはできるの?
禁止ではなく、制御するという考え方
作村 特定の種をのみを絶滅させることは、現在の科学力ではほぼ不可能と考えられています。セアカコケグモが繁殖を開始する前の状態なら、絶滅駆除も可能だったかもしれませんが、現在の状況的には、駆除フェーズから、制御フェーズに移行したというところでしょう。
ちなみに“制御フェーズ”とは、有害生物を極力増やさないことに注力する段階のことです。このような考え方をペストコントロールと言います。ペストとは害虫や有害生物のことを指します。
中山 一度、世間に広まってしまった物事とは、上手く付き合っていく方が良いという考え方のこと?
作村 その通りです。私達の身近な例で言うと、スマートフォンは便利な半面、歩きスマホ問題や、運転中の利用など交通事故の原因になる問題も抱えています。しかし、何でもかんでも禁止にするよりも、事故につながらない使い方や機能向上の方に向かっていくべきというアプローチが、リスク制御(コントロール)の考え方です。
中山 なるほど。
Movable Type クラウド版でも、従来のウェブサイト構築が可能
作村 さて、このあたりで、ウェブ制作時におけるリスクについて触れておきたいと思います。
中山 ようやく本題に近づくね。(まだ遠い気がするけど)
作村 作りたかったウェブサイトが作れなかった時に発生する損失がリスクです。話を単純化するために、ウェブサイトオーナーを「委託者」、ウェブサイト制作会社を「受託者」とした場合。委託側のリスクは、そのウェブサイトを計画通り作ることで得られる利益が得られなかったり、減少したりすることがリスクです。受託側のリスクは、契約不履行による売上減と入金の遅延です。
中山 どんな場合にリスクが発生するの?
作村 ケース・バイ・ケースなので、ここでは「過去にソフトウェア版の Movable Type を使った経験のある人が Movable Type クラウド版を初めて使用するケース」に話をしぼりましょう。
中山 Movable Type クラウド版を使用する場合のリスクか。自社サービスの不利益になりそうな話をして大丈夫(笑)?
作村 それって顧客視点では、利益のある話ですよね。例えば、道を歩いている人の前に落とし穴があることが知っていれば、「そのまま歩くと穴に落ちますよ」と教えるでしょう?でも、最初からその人は目的地に向かって歩いていたわけですから、引き返さずに落とし穴を飛び越えるなり、迂回して直進するはず。
中山 まあ、そうだよね。
作村 これまで Movable Type を使ってきた人たちは、Movable Type クラウド版を使っても「これまでどおりのウェブサイト構築が可能なのか?」と考えます。部分的にでも可能じゃないことがあれば、それはリスク。
Movable Type の登場が13年前で、クラウド版の登場がほんの約2年前です。10年間で溜め込んだノウハウは、ウェブ制作会社にとってはビジネスモデルの一部を形成しているので、「クラウド版でもちゃんとビジネスモデルを継続できるのか?」と考えるのは当然です。
中山 そりゃそうだ。
Photo Credit: Joaquim Massapina via Compfight cc管理作業と運用コストがダブルで低減
作村 ウェブサイトオーナーも「Movable Type で実現できていた要件を、クラウド版でも継続できるのか?」と考えます。できないことがリスクになります。また、リスクを増加させる要因として、ウェブサイト構築要件確定後の要件のブレが挙げられます。要件のブレは主に委託者側に起因する場合が多い。
中山 ふむふむ。
作村 制作会社である受託側にとっては寝耳水の話ではありますが、ビジネスの世界で「無理難題は断れば済む話」ではありません。むしろ、このような不測の事態に遭遇しても、柔軟に対応できる技術があったり、環境を用意しておくことが、リスクの制御であり、受託者側のビジネスモデルです。
中山 万が一かもしれなくても、そういう事態は想定しながら仕事しなきゃいけないもんね。
作村 Movable Type クラウド版は、ソフトウェアとインフラとマネージドサービスを一体化したサービスです。サーバーへのインストールや死活監視などをお客様に代わって、シックス・アパートが行います。裏表の話として、インフラの管理はすべてすべてシックス・アパートが行いますので、お客様がOSやデータベースなどを直接操作することができません。
中山 ソフトウェア版を利用している限りサーバーの自由度が保証されていたのに、クラウド版を使うことでサーバーの自由度がなくなるということね。
作村 はい、これは大きな変化です。ひとつの考え方として、サーバーの自由度でウェブサイトの幅広い構築要件を満たしていた場合、サーバーの自由度がないとリスクと真正面からぶつかる可能性あります。Movable Type クラウド版では発売当初から「Basic認証」や「HTTPリダイレクト」等サーバー側で設定が必要な機能を、Movable Type の管理画面から設定できるようになってはいましたが。
今回、「マルチドメイン」と「IPアドレス接続制限」も Movable Type の管理画面から設定可能な機能として追加しました。ソフトウェア版の Movable Type でこれらの機能を実現していたお客様は多かったと思います。今後は、クラウド版でも同様に利用できるようになります。
中山 これまで、Movable Type のソフトウェア版でマルチドメイン運用していた方々も、これまで同様の運用がクラウド版でも可能になったわけだ。ところで、マルチドメインを利用したユーザーはそのメリットを知っていても、初めてマルチドメインを使う方はそのメリットを理解できないかも。
作村 「ひとつのサーバーで複数のドメインを運用すること」をマルチドメインと言います。1ドメインあたりのコストが割り算で安くなるので、運用コスト削減メリットがあります。また、ウェブサイト間でテンプレート共有が可能なので、別々の Movable Type で複数のサイトを運用するよりウェブサイト管理作業の低減が見込めます。
中山 ふむふむ。IPアドレス接続制限についても教えてください。
作村 ウェブサイトのアクセスの発信元のIPアドレスの値から接続の許可/拒否を行う仕組みです。例えるなら、「空港の入国検査ブース」みたいなものです。具体的には、Movable Type の管理画面に自社ネットワークのIPアドレスを登録することで、外部ネットワークからの管理画面へのアクセスを防ぎます。また、閲覧側を含むすべてに自社ネットワークのIPアドレスを登録することで、社内ポータルサイトのように社内サーバーに置く場合に近いセキュリティを保てます。
中山 なるほど、よーくわかりました!じゃあ、最高の笑顔で、締めくくって下さい。
ドメインあたりのサーバーコストを下げませんか?
今年はドメイン自由化元年と呼ばれています。TLD(トップレベルドメイン、「.com」や「.net」、「.jp」)に新たに、「tokyo」「yokohama」等の地域を表すもの、「.company」「.coffee」等の特性を表すものが追加されました。「.blue」のように色を表すドメインがあることを考えると、もはやなんでも有りの世界です。今後、ドメインの種類はねずみ算方式で増えていくでしょう。
「サイバースクワッティング対策として、とりあえず取っておくか」と、お考えの方も多いかと思いますが、先にご説明したように、マルチドメインとはサーバー1台で複数のドメインを運用することですので、利用することで1ドメインあたりのサーバーコストを下げることができます。
せっかく取ったドメインなら、Movable Type クラウド版のマルチドメイン機能で活用されては如何でしょうか?
Six Apart をフォローしませんか?