~ネットコンシェルジェ代表の尼口さんに、メディア運営のコツを伺った~ 「オウンドメディアを立ち上げるなら、一人で回す意気込みを持とう」
「eコマース・ブランディング」を掲げる、EC専門のプロデュース会社のネットコンシェルジェさん。
eコマースのブランディングからクリエイティブ、マーケティング、システムまで、eコマースビジネスの全てを支援する、シックス・アパートのパートナー企業として長年お付き合いいただいています。
ネットコンシェルジェは自社のブログでも有名で、海外のユニークなEC事例を日替わりで、尼口さんの解説と考察付きで紹介しています。これまでに読んだことがある方も多いのではないでしょうか。
「高品質のブログ記事を毎日書き続けるなんて、きっとすごいノウハウを持っているかに違いないっ!」と私は常々気になっていたので、代表取締役の尼口さんに取材させていただきました。
尼口さんの「情報収集術」と「編集力」について、じっくりお聞きしてきましたよ。
自社でブログを始めた目的は?
インバウンドを増やすことがメインの目的でした。加えて、最新のEC業界情報を知りたいという知識欲もありました。
やる以上、ただの事例紹介として“事実を羅列して終わり”ではなく、ECを生業とする方々の役に立つ“独自の考察”を必ず添えるようにしています。「なるほど」と思ってくれて、「自分もやってみよう」と前向きになってくれれば、ひいては業界を盛り上げることにもつながるので。
※インタビュアー(中山)が最も印象に残っている記事は、1個1500円のアイスクリームをサブスクリプション型Eコマースで販売する「MilkMade Ice Cream」という事例。ビジネスモデルは秀逸だし、なによりアイスがウマそう(笑)。
ネタ探し、編集、執筆をすべて一人で?
初めは自分一人ですべて回しました。なかなか大変ではありましたが、慣れてくると仕事のサイクルの一部になってきましたね。自分の知識欲も満たされるし、新しい事例を知ることは面白いし、苦にならなかったです。
固定ファンが読んでくれていて、けっこうシェアもされますし、インバウンド効果を実感していました。ただ、平日の毎日を一人で更新して行くのは、苦ではなかったとはいえ、決して楽でもないですけれど(笑)。
社長をしながら毎日更新するのって、どう考えてもムリがありますけど…?
はい。自分一人でブログ運営と会社運営の両方続けるのはなかなかしんどいですし、本業の会社運営を怠るわけにはいきません。
最近、海外の協力者を何人か集めて、ネタ探しとサマリーはお願いするスタイルに変えました。協力者は海外に住む日本人です。Zen Startupの町田くんに知恵を拝借しながらこの方法を構築しました。
なので、今は編集長的な立ち位置、という感じです。メディアは成長するものだし、成長に合わせて運営方法や方向性は変わるもの。それが成長している証拠だとも思います。
1日の執筆時間は?
ブログを書く時間は1日40分までと決めています。この時間は、情報収集やネタ探しは含みません。純粋にキーボードを叩いて書き出すアウトプットの時間です。インプットは常にしている感じです。日常のあらゆる行為がインプットだと思うようにして見聞きしています。
情報収集のコツやノウハウは?
特別な技や秘密…。ない(笑)。やるのは「検索エンジンを駆使する」だけです。
どこかの情報源にだけ依存すると情報に偏りが生じますから、特定のメディアには頼らないですね。結果的にTechCrunchのような有名メディアのリンクに引っかかることはありますが、基本的にイチから検索します。
ちなみに、検索するときは狙いを絞って探します。業界のワード、最近流行りのワード(動画マーケティング、facebook、vine等)と、業種(家具、漁業、デリバリー等)を絡めてみるとか、ですね。「今日は、家具業界の中でユニークな取り組みをしているECサイトを見つけるぞ」みたいな。
※2011年に創業した、大学の新入生が学生寮やアパートに移るなど、比較的小規模な引っ越しの際に荷物を運んでくれるサービス。130都市42校でサービスを展開中。
日本の事例が掲載されないのはナゼ?
あってもいいんですけど、国内で探してもチャレンジングな試みや、ユニークな取組をしているECが少なかったんです。あったとしても、すでに他媒体に取り上げられていたりしてて、新鮮味が薄かったですし。
だから、わざわざ自分たちで取り上げるほどでもなく、「じゃあ、海外のネタに特化してはどうか?」となりました。そのほうが独自性も打ち出せるし、ネタも見つけやすいし、真似されにくい。
探してみた結果、アメリカの事例が極端に多いことが判明しました。ブログでも9割がアメリカの事例のはずです。アジアもちょこちょこ増えてきましたかね。意外にヨーロッパは見つかりにくいです。社内でも「なぜだろう」と話題になるんですが、理由はわからないです(笑)。
やはり、アメリカは「人がしないことをする」、「新しいことに挑戦する」という風土があるんでしょうね。
オウンドメディアを運営してよかったことは?
そもそもの目的だった、インバウンドが増えたことですね。
EC業界でネットコンシェルジェの知名度が上がりました。六本木周辺のスターバックスでふつうに声をかけられることもありますし、EC団体の行事に招待されることも増えました。それと、ブログのおかげで書籍出版もできました。 『なぜあなたのECサイトは価格で勝負するのか?』 それと、「まだ世界にもないオリジナルのサービスを作る」という企業目的もありまして、海外の動向を追っているうちに、ECの未来像に「キュレーション」や「ソーシャル」、「発見性(セレンディピティ)」といったキーワードが見えてきて、それをこれまでの経験と掛けあわせて企画したのがショッピング情報まとめアプリ、「People & Store」です。世界中のサービスから学びながら「People & Store」を詰めていけたのは、このブログをやっていて一番良かったことかもしれません。
予想外の効果は?
体系立ててモノを考え、人に説明できるようになったことですね。
以前は、人前で話すことが得意ではなく、行き当たりばったりな話をしがちだったんです。ブログを書くことで、思考を整理できるようになり、順序立てて論理的に伝えることができるようになりました。
アウトプットすることで知識が高まって、自分の脳内にもナレッジベースができたイメージです。
今後の運営は?
効果は出ていますけど、どうやって進化させようかとは考え中です。すでに自分一人で運営はできない規模になっているし、他の方の協力なくしては成り立たないので。
ブログ上は私一人で書いているように見えるでしょうが、他の人にもスポットライトが当たるようにしたいです。ブログの効果をすべて自分で享受するのではなく、関係者全員で分かち合わねばって思っています。
オウンドメディアを検討中の企業にひとこと
「まずは自社でやってみましょう」と声を大にして言いたいですね。
「文章が得意じゃないから」、「何を書けばいいからわからないから」と、安易に外部に丸投げするのはやめましょう。自分で書くことを担当者はコミットしてほしい。
アウトソースを否定するつもりはなくって、していいんです。でも、最初から社外に頼んだら、頼まれた方だって困るし、頼んだ方はコントロールできないし、ナレッジも蓄積されないですよ。
自社の魅力を最も知るのは社内の人間だし、愛着があるのも社員ですよね?だったら、まずは自分で経験して、仕事を回して、苦労しながらノウハウを身につけるべき。
僕も最初は一人でやって、運営方法を体感してから、リサーチやサマリーづくりなどを部分的に人にお願いするようになりました。オウンドメディアを立ち上げる以上、それくらいの意気込みは持ちましょうよ(笑)。
以上、ネットコンシェルジェ代表取締役の尼口さんのメッセージでした。
多忙な社長ですら、自分一人ですべてを回すことはできるという、素晴らしい例ですね。私も見習いたい。
尼口さん、貴重なお話、ありがとうございました(^^)
株式会社ネットコンシェルジェ
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