モバイルシフト&誰もが発信者になる時代、5年後のPRパーソンに必要なのはやっぱり「思いの力」 ハーバード・ビジネス・レビュー、クーリエ・ジャポン両誌の編集長に聞きました
ブログやソーシャルメディアの普及により、いまや誰もが発信者。ご存知のように、ティーンエージャーだってスマホ1台で気軽に発信できる中、既存のメディアとオウンドメディア・個人のメディアの情報発信の立ち位置が変わってきています。メディアそしてコンテンツを消費する我々の変化に合わせ、PRパーソンはどうあるべきでしょうか。
2月4日に、下北沢B&Bで行われたイベント『冨倉由樹央×岩佐文夫×大堀航 「5年後の広報・PRについてそろそろ本気で考える PRパーソンは生き残れるか?!~PR Table企画 キーパーソンに聞く!スペシャル対談 Vol.1〜」 | B&B』にて行われた、COURRIER Japonの冨倉編集長とDIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューの岩佐編集長のお二人によるメディア論、今後のPRパーソンに求められることは?というお話をご紹介します。※以下、敬称略にて失礼します
From: magazine by Roco Julie
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー、COURRIER Japon 両誌の特徴
質の高い情報を提供し、コアな読者層に愛され続けている両誌について、それぞれの編集長に聞きました。
経営者向けのクオリティコンテンツ、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー
岩佐「ハーバード・ビジネス・レビュー日本版(以下HBR)は、六割が米国版からの翻訳記事で、オリジナルコンテンツは四割になっています。米国版は論文誌のため、一記事が8000字。ファストコンテンツを売りにできるメディアでないので、文章量への迷いはありません。読んだ人に深いとうならせるものを作っています。
また社員はハーバードを卒業しているわけではないのですが、企業のトップの人たちと話せる理論武装・問題意識を持つようにしています。例えば、大企業が傾いたときに「リストラすればいい」と言うだけではなく、経営者ならどうする?を考える、など。
読者層としては、経営向けの雑誌なので、やはり幹部役員が半分。残り半分は、将来経営層に行きたい意識が高い人ですね」
海外志向の人の背中を押すための様々な視点を提供する クーリエ・ジャポン
冨倉「クーリエ・ジャポンはHBRとは違って、フランスのクーリエからの翻訳の縛りはありません。ネットでは自分が興味ある記事を読む一方、紙は自分が知らないことを知らせてくれる媒体なので、記事の内容についてもダイバーシティを意識しています。真面目な記事もあるしそうでないものもあるなど振れ幅が大きかったり、編集部は女性がやや多く男性にはない視点も出てきます。また、海外でのいろんな経歴を持った人が集まっており、外部の協力者含めて15ヶ国語カバーしています。その意味でも、いろんな視点が入ったメディアになっています。
読者層としては、パスポートを持っている人ですね。海外に関心があれば、年齢性別職業は関係ない。人を内向きにさせない、海外disって日本最高じゃんで終わらない雑誌を意識しています」
2014年のメディアの変化:モバイルシフト
岩佐「紙の媒体の存在感が落ちていて、モバイルシフトを感じます。
Webサイトの見られ方も変化してきていて、PCからの閲覧と違ってモバイルだと関連記事を見てくれない」
冨倉「古い雑誌の終わりの年。回線速度とOSが進化してストレスが減ってきたことが、メディアではなく、脳のあり方をより即物的に変えていると感じます。たとえば据え置きゲーム機でさえも、起動してコントローラーを持つというのが面倒くさくなっているそうです。向き合い方が、変わってく中での情報提供方法を検討しています」
メディアから見て、理想的なPRパーソンとは:メディアに合わせたコンテンツの提案がある人
冨倉「理想的なPRパーソンについて思い返してみると、残念ながら良いエピソードはあまり思いつきません。特に、無差別FAXは無しにしていただきたいです。紙の無駄なので。
なぜ、うちのメディアに声かけているのかがわかれば、興味を持てますので、連絡方法に一工夫、例えば一枚手書きの表書きがあると目を引きますね。直筆で理由が書いてあれば目にはする。簡単な事ですが、なかなかそういうことをする人はいませんね」
岩佐「無差別攻撃をやめて欲しいのは一緒です。また、PR会社の方のほうが雑誌を読んでくれていない印象がありますね。たとえば、HBRには、書評のコーナーがないので書評希望の本が送られてきても困りますし、ダイエットの記事もありません。情報発信先メディア数を増やしたくて声かけられた、と思うとやはりテンションが下がります。メディアの特性を理解したうえで提案してほしいですね」
これからのPRパーソンに求めるものは?
岩佐「つながりなどなくとも、いい企画があれば誰とでも仕事します。人を知っているだけでは、バリューにはなりません。実際に、メディアに頼らなくてもPRできるので、メディアとPRパーソンも対等だと思っています。むしろ、既存メディアに頼らず、オウンドメディアのような新しいメディアを自分でやるのもよいと思います。オウンドメディアに載せるからと、HBRからネタを引き出したりできるくらいの人が理想です」
冨倉「”PRパーソン”としてではなく、その人と仕事したいと感じるのは、「その製品が好きで好きでたまらない!」という思いが伝わってくる方ですね。PRしたいものが好きな人にアプローチいただきたいと思います」
岩佐「その人を通して得られるファクトが面白いですよね」
まとめ
「サービス・製品への思い」が強く、「相手のメディアに対するリスペクト(メディアポリシーや読者を想像)」を持った提案ができること。これはPRパーソンに限らず、他社と協力して企画を作っていく全てのビジネスパーソンに必須の意識ですね。
岩佐編集長の「オウンドメディアのような新しいメディアを自分でやるのもよいと思います。オウンドメディアに載せるからと、HBRからネタを引き出したりできるくらいの人が理想です」という発言は、このSix Apartブログのようなオウンドメディアを運営している者としては、勇気づけられる言葉でした。自社メディアだから語れることもあるし、権威あるメディアに引き出してもらえるからこそ価値がうまれる内容もあります。プロメディアの圧倒的な編集力とともに、オウンドメディアの立ち回りの良さというポジションにも改めて気付かされるイベントでした。
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