”数字よりも中身重視”です "さくらのナレッジ"流オウンドメディア運営術 ~後編~

前編では、立ち上げまでの経緯、運営を始めるまでを中心にお話しを伺いました。


後半は、日々の運営、KPI設定、社内外へのフィードバック、今後の課題や挑戦について、引き続きさくらインターネット株式会社の公式メディア、「さくらのナレッジ」の鈴木健介編集長にお話しを伺いました。


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トップや記事の見せ方での工夫は?

タブレットやスマホでの閲覧を想定していたので、最初からレスポンシブデザインにすることは決めていました。NHKスタジオパークマガジンワールドのような、なめらかな動きのあるリキッドレイアウトにもこだわりました。

あくまで主役は記事(コンテンツ)なので、サイト本体のデザインは極力シンプルでモノトーン調にまとめようと心がけました。

UXとしては、「さくらインターネットらしさ」をどの程度実感してもらうかを配慮しました。「役に立つナレッジを提供してるサイトだな…あ、さくらインターネットのメディアだったのか」ぐらいの方が良いと思い、あえてコーポレートカラーや企業ロゴはなるべく前面に出ないないようにしています。(いちおうフッターにはロゴ等を入れてますが)

ちなみに、サイトの制作期間が3週間と短かったので、モックは自分でデザインしました。


よかった経験、そうでもなかった経験はありますか?

よかったのは、「筆者プロフィールと写真表示は原則必須」にしたことです。責任が明確になりますし、コンテンツに対する読者の信頼度が高まったと思います。また、執筆内容については筆者にかなりお任せしていますが、トーン&マナー等のガイドラインを設定していまして、これまで炎上などのトラブルは発生していません。ファクトチェックはエンジニアに依頼しています。

想定外だったのは、レスポンシブデザインを導入したと前述しましたが、結果的にはPCからのアクセスが9割でした。読まれている時間帯は、平日のオフィスワークタイムです。エンジニアの方が出社して読んでくださっているので、記事の公開はなるべく朝イチにしています。

「エンジニアによる、エンジニアのための技術系ナレッジ」に大きなニーズがあります。そういうコンテンツには、多くのアクセス数と、ソーシャルでの評価が集まっています。

一方で、今は数字的な結果はあまりでていませんが、はじめてレンタルサーバ・VPS・クラウドを触る「非エンジニア」の方への情報提供も継続していくべきと考えています。今はタネをまく時期だと考えています。

過去記事の再利用にはどんな工夫を?

事例紹介の記事をA4のチラシにまとめてイベント会場で配布したり、営業ツールとして活用しています。インターン生がやってきたときの記事も印刷物に再加工して、採用セミナーで配布したところ、「サーバ会社ってどんな人がいて、どんな働き方をしているのか分からなくて不安だったけど、明るくて楽しそうな職場だ」と感じていただけて、好評でした。他には、メルマガでも案内していますね。いつか、書籍化ができればいいなと考えています。

※参考記事 「さくらに高専生インターンがやってきた!

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※コンテンツを印刷物にして再利用


社内へのレポートはどのように?

週次と月次レポートで社内にフィードバックしています。

<週次レポート>
誰に: 広報チーム内(6名)
いつ: 毎週1回
どんな数値: 訪問数、PV数、ソーシャルの反応、サービスサイトへの誘導数・率etc

<月次レポート>
誰に: 社内全員にイントラブログで
いつ: 毎月1日~3日以内
どんな数値: 週次レポートの内容 + 人気記事ランキング、日別推移、サービスサイト推移との比較、新規筆者の紹介

社内ブログをレポート発表場所として「見える化」することで、社員のモチベ-ションにつながります。記事を書くに至った背景等、インサイドストーリー的な要素も伝えています。私の仕事の3分の1はこういった裏方的なことですね(笑)。

KPIは?

初年度のKPIは、「制作記事数:50本/年」「アクセス数:60,000pv/年」でしたが、やってみたら記事数は2倍でしたし、アクセス数は10倍という喜ばしい結果でした。

2年目(今年度)は、”数字よりも中身重視”です。読者が、さくらのナレッジを読むことで、よりステップアップしていただくこと。また、勉強会やオフ会(さくらの夕べ等)などにも参加していただき、コミュニティ・マーケティングを実現することを目指しています。


これまでの社内の評価は?

営業や広報チーム内からは、お客様と接するときに、さくらのナレッジが話題のタネになるくらい認知度があがってきたと聞いています。スタートアップ企業のお客様を事例としてご紹介することで、サービスの認知度が向上したとか、お客様の社内で「さくらを使ってよかった」と言っていただけているようです。

運用メンバー(カスタマーサポートや、サーバ保守担当など)からは、自社の取組みをアピールできる場として認知されてきています。採用面接の場で「さくナレを見て、職場のイメージがわいた」と言っていただくことも多々あり、さくナレ経由で採用サイトに流入する数も確実に増えてきています。

開発メンバーは、これまでも技術ナレッジを社内wikiで共有する習慣はあったのですが、さくらのナレッジ誕生によって、「社外にもアウトプットできる場ができた!」と認識されているのではないかと思います。忘年会等で「さくナレで書けるネタあるよ」と立候補してくれることもあります。

あと、「親に読んでもらって、ようやく自分の仕事を理解してもらえた」と、胸をなでおろしている社員もいるみたいです(笑)。


今後の課題は?

企業活動としてやっていることなので、記事を読んでいただくことで「さくらイイネ!」、「さくらサンクス!」、「さくらグッジョブ!」と思ってもらえて、行動に移していただくことがゴールだと考えています。そのための集客、バズ促進、サービスサイトへの誘導など、まだまだ試してみるべき施策はたくさんあると思います。

とはいえ、過剰にしすぎると逆効果になりかねないので、バランス感覚を磨きながらチューンアップを重ねていきたいです。


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オウンドメディアは、「親しみの醸成」が最上のミッションだと思うので、ある日急に大幅なリニューアルをどーん!とやるよりも、「日々、少しずつ便利になっていく」ほうがユーザーにとって有益だと考えています。

さくらのナレッジはオウンドメディアでありながら、社外の方も筆者に招いてコンテンツを提供してもらっている珍しい媒体です。幸運なことに、これまでトラブルなくWin-Winの関係を構築して運営してこれました。

今後も引き続き、さくら・筆者・読者の3者がそれぞれメリットを感じてもらえるような媒体を運営していきたいです。


オウンドメディアを始めたい人へのメッセージ

始めることのリスクって、あまりないです。費用もそんなにかかりませんしね。仮にうまくいかなくても、企業としてダメージはほとんどありません。社内のコンセンサスをとりやすい時代になっていますし、始めるためのツールもたくさんあります。

昔に比べると、やりやすい環境が整ってますよね。走りながら考えればいいのでは。自分も勉強中なので、社外のオウンドメディア運営担当者と意見交換やディスカッションをしたいです。

最後にヒトコト!

さくらのナレッジ編集部では、ITエンジニアの方むけに、役立つ情報&おもしろネタを全力でシェアしていただける方を、社内外を問わず募集中です!


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イラストは社長だそうです。なぜサカナを持っているのか?
理由は鯖(サーバ)ですって。まさかのダジャレ・・・。


>>前編から読む


お話を伺った人

さくらインターネット株式会社
さくらのナレッジ編集長 鈴木健介さん
式ツイッター
公式FaceBookページ


参考リンク

今、オウンドメディアが必要とされる3つの背景
「継続できる」オウンドメディアを運営するための14のステップ
ブログメディア運営のための55の鉄則
コンテンツマーケティング実践の7つのステップ
人に読まれて育てる企業オウンドメディアのはじめ方~Six Apart ブログ運営7ヶ月を振り返って~
オウンドメディア「Six Apartブログ」の運営の実態を、INBOUND MKTG 2013でお話しました

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