Webサービスの運営のために欠かせない新しい役割「Growth Hacker(グロースハッカー)」とは?

自然にユーザー数が増えていくための仕組みをどう作るか

User Growth とは。これからのサービス運営に欠かせないいくつかの視点

久しぶりの登場となりましたマーケティングチームの市川です。きょうは以前(5月25日)が投稿した記事を受けた第二弾的な内容として、いまFacebookやQuoraなどシリコンバレーのWebサービス企業で話題のポジション Growth Hacker(グロースハッカー) ならびに、その職務である User Growth(ユーザーグロース) という活動についてもう一歩掘り下げてみたいとおもいます。

Battelle氏は「おそらく第一世代のGrowth Hacker(グロースハッカー)は、SEO(検索エンジン最適化)を実施するマーケティング・エンジニアだろう」と指摘。「FacebookのOpenGraphというインフラがそろったいま、企業を成長に導ける素養をもった新しいタイプのエンジニアを擁した企業が、シリコンバレーで成功するスタートアップ企業になることができる」(Conway氏)。

まだ日本では耳なじみのないこの Growth Hacker(グロースハッカー) というポジション。 Facebook、Twitter、Quora でそれらの「ユーザー獲得(User Growth)チーム」を率いて、ユーザー数拡大に貢献してきたAndy Johns 氏が7月25日に来日し、Open Network Lab 主催のイベント「Facebook、Quoraのユーザー獲得チームの秘密 ~ユーザー数を5億人へ、Facebookユーザー獲得チーム初期メンバーAndrew Johns氏来日講演」に登壇しました。

当日の様子や彼へのインタビューなどはすでに多数公開されているので、今回はそれらを引用&紹介しつつ、オンラインでサービス提供している事業者として押さえるべき User Growth(ユーザーグロース) のポイントを、順を追ってご紹介していきます。

User Growth させていくために押さえるべきポイント

  1. 必要なスキルとパーソナリティ
  2. 追うべき重要業績評価指標(KPI)
  3. 施策の立案&実施プロセス + 組織・体制
  4. 大事な心意気

1. 必要なスキルとパーソナリティ

まずは Growth Hacker(グロースハッカー) に向いているのはどんな人材なのでしょうか。

Growth User のために目指すべきサービスの理想形としては、(出稿費用を必要とするような)旧来のマーケティング手法を使わず、自然にユーザーが増えていく仕組みを作り上げることにあるので、その発想をひらめき、実装にこぎ着けるためにも、基礎的なプログラミング知識やデータベースの解析能力、さらにはデザイン(UI/UX)や情報構造への知識や理解も必要になります。

この「Growth Hacker(グロースハッカー)」、スタートアップ(に限らないですが)の成長を促進させるためにコードを書きながら仮説の検証、施策の立案ができる人ですね。マーケティングの知識とコードを書けるスキルが必要らしいです。スペック高いなw。

さらには地味な作業の積み重ねや失敗をいとわないタフさ、多数の関係者(ステークホルダー)との調整力、結果を数値化し効果検証していく能力も必要となるでしょう。

2. 追うべき的確な重要業績評価指標(KPI)の見きわめ

さらに旧来のマーケティング手法に比べると、実施した施策の効果が数値としてすぐに反映されるのが User Growth の特徴です。だからこそ、何を重要業績指標(KPI)として注視していくかを見きわめ、的確に設定しておくことがことのほか重要です。

そこで、Andrew Johns氏が常に追いかけている KPI として紹介していたのが以下4+1つの指標です。

下記の指標を足し算引き算して、ネット(純粋な)アクティブユーザーが決まる。 ベーシックなフレームワーク。

  1. Churned 非アクティブユーザ(Facebookの定義では29日以内でログインしていないユーザー)
  2. Signups 新規獲得ユーザ数
  3. Deactivated やめた(退会)ユーザー
  4. Resurrections 30日以上たって戻ってきた復活ユーザ
  5. NetActive 差し引きしたアクティブユーザー。(2+4-1-3)

図にすると以下のようになります。

user-growth-kpi620.png

つまり User Growth 活動をおこなっていくうえで、システム部門と連携してこの4つの指標(「Churned」「Signups」「Deactivated」)を定常的、かつ正確な数値として算出できる体制を作っておき、最終的な「NetActive」(アクティブユーザー)の増減を時系列で追っていくことが不可欠ということですね。

3. 施策の立案&実施プロセス + 組織・体制

次に、最終的な目的である「アクティブユーザー」を(結果として)増やすため、中間アクションポイントとして以下 KPI を改善させるための施策をおこなっていきます。

  1. どうすればサインアップを増やせるか
  2. 非アクティブユーザーをどうすれば減らせるか
  3. 非アクティブユーザーををどうすればアクティブ化できるか

図にマッピングすると以下のようになります。

action-point620.png

いままで Andrew Johns氏がおこなってきた施策として代表的な事例を紹介していました。

新規サインナップを増やすため
  • SEO(流入数増加)
  • ログイン、ログアウト、サインナップページの UI/UX(デザイン)改善(CVR 向上)
  • アドレス帳インポート(会員の友人をまとめて登録)
非アクティブユーザーをアクティブ化(復活)させるため
  • 定期的にリマインド・メールを送信
非アクティブ化するユーザーを減らすため
  • 知人であろう会員を紹介することで友人を増やしてもらう(定着率向上)

図にマッピングすると以下のようになります。

betterment-actions.jpg

さらにこれらの施策のアイデアを出すための取り組みとして、社内メンバーをあつめてブレインストーミングをおこない、User Growth(ユーザーグロース) のためのアイデアを無作為に(約200個くらい)だしてもらい、実現までのハードルが低くて効果がすぐにでそうなアイデアから順番に実行していくということです。

ある意味ここが Growth Hacker(グロースハッカー) というポジションの注目されているゆえんなのですが、今までであればそれぞれの機能や役割を、それぞれの部署(マーケティング、製品企画、エンジニア、サポート、営業など)の、それぞれの担当者が個別におこなっていたことを、User Growth(ユーザーグロース) という目的のもと、サービス全体を横断的に俯瞰しつつ、問題点を洗い出し、施策、改善させていくことが不可欠であり、それが組織・体制として実行できるか、ということが成否を分けるポイントであるといえます。

4. 大事な心意気

最後に、Andrew Johns氏が、User Growth(ユーザーグロース) の活動をつづけていくなかでのポリシーとして、Facebook 社内に張り出されている2つの標語を紹介していました。

  1. Move Fast and Break Things(ガンガン動いてドンドン壊せ)
  2. Done Is Better Than Perfect(完璧を目指すよりまず終わらせろ)

ひとつの User Growth(ユーザーグロース) 施策によってユーザー獲得パフォーマンスが数パーセントでも上がると、時間の経過とともに大きな数値になって反映されてくるとのこと、とにかく実施までのスピードを速めることが大切だと力説していました。

まとめ

弊社シックス・アパートでもいくつかWebサービスを運営しているので、日々ユーザー数向上のためにいろいろな施策をおこなってはいるのですが、あらためて Andrew Johns氏がおこなっている施策や考え方はとても参考になるものばかりでした。

個人的にも、業界的には新たな領域である User Growth(ユーザーグロース) という活動に、これからも注目していきたいと思います。

参考リンク:User Growth を理解するために必読な日本語記事一覧


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