オウンドメディア界隈の2016年を振りかえる

こんにちは。フリーランス編集者のアミケンと申します。 シックス・アパートのことぶきさんと一緒に「オウンドメディア勉強会」の幹事をやらせてもらっています。

2016年も残りわずかとなりました。このSix Apartブログで、"オウンドメディア担当者は、編集のイロハをどう学べばいいのか? 今こそ知って欲しい『編集十訓』" を8月に寄稿させてもらった頃は、メンバー数が200名だったオウンドメディア勉強会ですが、いつの間にか300名を超えていました。まだまだオウンドメディア界隈の活況は続くようです。

なにかと忙しいこの師走は、毎月実施している勉強会の代わりに「オウンドメディア忘年会」という名の飲み会を催しました。その場でも、今年はオウンドメディア界のみならず、Webメディア業界として「色々あった年だったよね~」という話で盛り上がりました。

そこで、今回はオウンドメディア勉強会の幹事である、ことぶきさんと私アミケンの2人で、2016年のオウンドメディア界隈について、おさらい的にザックリ振返ってみたいと思います。

omstudy_2016_02.jpg 左:オウンドメディア勉強会関連の記事が掲載された雑誌・書籍を持つことぶき 右:トフを持つアミケン

ついに300名を超えたオウンドメディア勉強会

アミケン

さて、まずはオウンドメディア勉強会について振返ってみたいと思います。色んなテーマで勉強会やりましたよね。

…といったテーマがありました。「拡散ルート」の回はレポート記事の反響も大きかったですよね。勉強会参加者の知見が集まって、学びのある記事になったのは良かったですよね。

そしてFacebookコミュニティのメンバー数も増えましたね。

ことぶき

本当に、おかげさまでたくさん仲間が増えました!オウンドメディア勉強会は、2014年の6月にスタートし、Facebookグループのメンバー数が同年末には約50名。2015年末には約130名。2016年末に300名を突破しました。ざっくり倍々くらいのペースで増えてきましたね。

最初に勉強会を設立した時のコンセプトが「ギブ&テイクでそれぞれの学び、課題、悩みを相談し合おう」というものだったので、「誰でも参加できる会」ではなく、参加のハードルを少しだけあげています。参加するにはメンバーからの紹介・推薦があるか、もしくは「自メディアとして学びたいこと&自分がシェアできること」の両方を提案できる人に限っています。

アミケン

そのコンセプトは続けていきたいですね。グループ参加申請をいただいても、運営しているメディアが不明であるとか、連絡が取れない方は、申し訳ないのですが参加保留のままになっています。仲間になる方が、どんなメディアを運営していて、どういう想いを持つ人なのかについては、引続き重視していきたいと私も思います。

逆に言うと、メディアの月間PV数はいくつ以上とか、そういうのはあまり気にしていませんね。

ことぶき

はい、メディアの規模は関係ありません。それに、PVだけで測れるものでもないですしね。

「これからメディアを運営しようと思ってます」という人については、提供できるノウハウが今の時点でなくても、良い問題提起をしてくれるという意味で歓迎しています。

2~3年運営していると、担当者や方針が変わることも

アミケン

オウンドメディアを2~3年運営していると、目的や方針がこじれることもあるじゃないですか。「そもそも、何のためにやってるんだっけ?」みたいな。

ことぶき

そうですね。オウンドメディアが注目され始めたのが2~3年前。その当時立ち上げた担当者が退職・異動してしまい、残されたオウンドメディアどうしよう……?というケースを聞くようになりました。

私もSix Apart ブログを3代目の担当者として2014年に引き継ぎました。それぞれの代で全然方針が違いました。私もゼロベースで考え直し「コンテンツマーケティングのためにオウンドメディアを運営する人を支援するメディアにする」って方針にガラっと切り替えました。

担当も会社の戦略も変わって当然ですし、そこでメディア運営の目的に再度立ち返り、軌道修正していくことが出来れば良いのだと思います。

継続か終了か。判断の軸が必要

アミケン

2016年のトピックとして、オウンドメディアのパイオニアとして名高い「コカ・コーラパーク」終了のお知らせは大きなニュースでしたよね。個人的には「コカ・コーラ ジャーニー」への一本化というか統合に向けての英断だったと捉えているのですけど。「コカ・コーラのオウンドメディアは失敗に終わったのか?」…なんて見方をする人もいました。ことぶきさんはどう思いました?

ことぶき

コカ・コーラパークの場合は、ユーザーがアカウントを登録して参加するサービスだったので、ユーザー向けのアナウンスが必要だったという意味で、きちんとリリースを発信したのでしょうね。

メディアをほったらかしにしない、というのはすごく大事なことだと思います。頻度が下がってもたまには更新したり、他のメディアと統合したり、またはきちんとサイトを閉じるなど、やり方はいくつかあります。

アミケン

色んなオウンドメディア担当者の話を聞くと「運営を開始して2~3カ月だとうまくいってるかどうかさえわからない」っていう声が多いですよね。実際、マーケティング施策として1年以上のロングスパンで効果の有無を検証すべきものだと私も思います。初期オウンドメディアブームから今ようやく2~3年目をむかえて、ちょうど判断の時期を迎えているメディアが増えているのかなとは感じます。

採用目的のオウンドメディアも活況

ことぶき

去年後半から今年は、人事や広報担当者が中心となって採用を目的としたブログを新規で立ち上げる例をよく見ました。自社のニュースのみならず日常の小ネタなども気軽に頻繁に発信しています。会社の中の雰囲気が伝わって、親近感がわきますよね。

例えばメルカリさんの「mercan(メルカン)」、Gunosyさんの「Gunosiru」、エン・ジャパンさんの「ensoku!」とかですね。

アミケン

ことぶきさんは広報系の人からはどんな質問・相談を受けますか?

ことぶき

「会社発信のさまざまな情報が一つのブログにごった煮状態 or ソーシャルにしか書いていないのですが、どうなのでしょう?」という質問はよく聞きます。たとえば自社ニュースの発信もあれば、求人目的で会社のカルチャーを紹介する記事もあれば、自社の製品・サービスのスペシャリティを発信するためのコラムがあり、それらが混在している。ネタを、どこにどう発信していくか、ですね。

シックス・アパート広報としては、ストックしたいという意味もあって、ソーシャルではなく自社のドメインで記事を公開しています。また、目的に合わせて2つのメディアを運営しています。広報ブログの方は週1回「こんな働き方しています」「イベントに出ました」「こんなノベルティつくりました」「面白い福利厚生あります」みたいな社内の小ネタや、節目のご挨拶などを書いています。もうひとつ、Six Apartブログの方は"コンテンツマーケティング、オウンドメディア支援のためのメディア"という方針でメディア運営の話がメイン。読者層も目的も違うので完全に分離しています。また、各製品チームが運営する利用者向けのブログやコミュニティサイトは、別にあります。

アミケン

なるほど。まぁ「オウンドメディアはこうあるべき」っていう縛りがあるワケではないと思いますけど、パブリック・リレーションなのか、セールス・プロモーションなのか、リクルーティング、ブランディングなのか目的は明確にした運営はした方が良いとは思いますね。

多様化・個性化するオウンドメディア

ことぶき

私が「良いメディアだなって」思うところは、自社のビジョンが伝わる内容を発信しているメディアですね。例えばサイボウズさんの「サイボウズ式」は、チームワークをよくする、とうテーマが全体に貫かれていて、それがサイボウズのいいイメージにつながっています。そういうメディアが増えていくといいなと思います。

アミケン

各社のオウンドメディアのカラーが、しっかり表現できている方が面白いですよね。やっぱりオウンドメディアとしてやるからには、その企業の特徴とかカルチャーとか理念がにじみ出る方が良い。もっともっと多様性が広がっていくと良いなと思いますね。逆に言うと、似たようなメディアが増えてもつまらない。他のメディアから記事をパクるのは論外として、メディアとしてのアイデンティティを運営しながら確立していって欲しいなと思います。

オウンドメディア界も編集者不足が課題

アミケン

今年はWelqに端を発した、キュレーションサイトの問題が大きなトピックとしてありました。ユーザーにとってはオウンドメディアも広い意味で同じ「Webメディア」として見られている中で、私は「編集のチカラ」が改めて見直されていると捉えています。他にも色んな視点、課題はあると思いますが、ことぶきさんはどう捉えていますか?

ことぶき

ライターさんに協力してもらう場合は特に、メディアを通して見せたい自社のビジョンやスタンスを絶対に外さないための編集力が重要になっていると思います。メディアを運営していく実務は、外部のプロに頼ることも多いかと思いますが、自社の名前と共に発信するに当たって、内容のハンドリングはできる限り社内にあるべきですね。

ライティングもほぼ自社で行っているメディアの理想的な例の1つが、ナイルさんの「UIDEAL」「SEO HACKS」と思います。会社の専門性が伝わる役立つ情報を常に発信している信頼感あるメディアですよね。

アミケン

オウンドメディアの運営体制も、いくつかパターンができつつありますよね。ざっくり「自社完結型」「外部ライター調達型」「編プロ委託型」「代理店介在型」とかかな。こんど勉強会メンバーにアンケートとって割合をだしてみたいですね。編集長あるいは編集者をどのレイヤーに置くかで、仕事の進め方も大きく変わると思うのですが「編集って何?」っていう基本的な共通認識は全てのレイヤーで持っておくべきかなと感じます。オウンドメディアがたくさん生まれる一方で、基礎的な編集スキルを持ち合わせた人、いわゆる編集者が不足気味で、そこは課題になっていますね。宣伝になってすみませんが、私もまだまだ微力ながら個人活動として「アミケン編集塾」っていう編集者を育成するプログラム始めてみました。

オウンドメディアが起点になって、新しいビジネスが生まれることも

アミケン

さきほど継続か、終了かって話をしましたが、継続的な運営体制が構築できているというベースの上に、進化の道というか、次のステージへと向かうメディアも出てきている感じがしますよね。

ことぶき

自社のポジションや戦略に合わせてオウンドメディアの目的や運営方法を組み替えながら続けていくことも大事ですし、さらにはオウンドメディアを起点に新しいビジネスを立ち上げていく流れが増えるといいなと思っています。

ビットエーさん「デジマラボ」は、AI、ロボット、マーケティングオートメーション、BIツールとか、今デジタルマーケティング界隈でホットになっているワードや最先端のテクノロジーを自ら実践して発信しているメディアです。

プロデューサーの中村健太さんに聞いたのですが、もともとデジタルマーケの専門家ではなかったけれど、自社がそういう領域に乗り出したいという思いがあり、専門家に話を聞き、勉強しながらメディア運営していったそうです。その結果、発信した記事が話題性をよんで広がっていったり、チャットワークさんとBOTを共同開発したりっていう展開につながっていったと。

既存製品・サービスのためではなく、メディア運営を通して新しい事業の柱を模索しながら作っていったわけですね。それが実際に形になっている事例として、すごく興味深い事例だなと注目しています。

オフラインでの行動を促すメディア

ことぶき

アミケンさんにとって「今年良いなと思ったオウンドメディア」はどこですか?

アミケン

私はホットペッパーグルメの「メシ通」かな。読み物として面白いとか、料理が美味しそうってだけじゃなく、実際に紹介されているお店に行きたくなる記事がいくつかありましたね。書き手の熱量が伝わってくるからなんでしょうね。

ことぶき

行動を促すメディアっていうのはすごくいいですね。

アミケン

TABIPPO」も行動喚起系として良いですよね。旅に特化して実際に世界一周旅行中の人に書いてもらってたりするので、めちゃめちゃリアリティがある。オフラインのイベントも頻繁に開催していて、そこで旅人同士が出会うことによる相乗効果とか化学変化もコンテンツに活かしている感じがあります。ああいうオフラインな活動は、私も来年もっと積極的にやりたいなと思います。

来年も、勉強会続けます!

ことぶき

さて、来年の勉強会、どうしていきましょうね。

アミケン

初期の勉強会でよくやっていたLT大会とかもしたいですね。著作権について学ぶ会とか、編集ノウハウとか、媒体資料の作り方とか、色々な要望をいただいていますし、編プロや代理店の仕事っぷりを評価する会なんかも盛り上がるでしょうね。オープンな場では言えないことや、今さら相談しにくいっていうテーマでも、ギブ&テイクの精神でシェアしていくのがオウンドメディア勉強会なので。ということで、来年もよろしくお願いします。

ことぶき

来年も原則毎月第三木曜日に開催していきます。年明けは、1月19日(木)にLT大会として開催予定です。もろもろ決まったら、Facebook グループで告知しますので、よろしければぜひご参加ください!


以上、オウンドメディア勉強会幹事2人による、今年の振り返りトークでした。来年もどうぞよろしくお願いいたします!

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